語り部シルヴァ

Open App
1/28/2026, 12:30:24 PM

『街へ』

重い荷物を下ろし電車に揺られて
離れていく自分の村を見届ける。
線路の隙間の穴を踏むリズムが心地良さを感じる。

今日私は村を出た。
親どころか村の人ほぼ全員に反対された。
どうせ若手がいないから。人手が欲しいだけ。
そんな魂胆が見え見えのお願いにじゃあ戻る
なんて選択肢はなかった。

もう村は見えなくなってトンネルが全て真っ黒に染めた。
不安な自分の心を表してるみたいだ。
でもきっと...大丈夫だから。

トンネルが開けた。
太陽に反射したビルたちが輝きながら迎えてくれた。

語り部シルヴァ

1/27/2026, 2:06:30 PM

『優しさ』

「〇〇はやさしーね!」
「〇〇のいいところはやさしいところです。」
無邪気の裏側に感じる悪意が込められた笑い声。
先生も止めようとはするものの一緒に笑っている。
あぁ...またか。

最初こそは嬉しかった。
けれど歳を重ねていくごとにそれが
なんの特徴もない人へのお世辞だと感じるようになった。
周りはかっこいいだの頭がいいだの言われていくうちに
随分と捻くれてしまった。

それからは優しいと言われても素直に喜べないし、
その度自分に劣等感を抱いた。
やれやれ...早く目覚めてくれないかなあ。

そう願うも残念ながらすぐには目覚めそうにも無いようで、
教室内に響くつんざく笑い声はずーっと頭に響いた。

語り部シルヴァ

1/26/2026, 10:36:25 AM

『ミッドナイト』

夜が始まる。
皆が眠り、世界がしんとなる。
冬の寒さのせいだろうか、
車のエンジン音もどこか静かに感じる。

僕ももう寝なきゃ。なんて思いつつも
目が覚めて寝付けなくなる。
ホットココアもマッサージもアロマも全然だめだ。
結局なんだかんだ1時には寝れるけど、
できることならもっと眠りたい。

冬仕様の布団は真っ暗な部屋で撫でると静電気が弾ける。
ふわふわでパチパチ。

暖房が効いてて暖かいのが救いだ。

スマホで時間を確認すると午前1時前。
ふぅ...そろそろ眠れそうだ。

布団にくるまり体を丸める。
...おやすみ。

語り部シルヴァ

1/25/2026, 10:07:20 AM

『安心と不安』

ひとりぼっちは嫌だ。
誰もこの悲しみに共感してくれない。
真っ暗で叫んでも水の中みたいに声がかき消されてしまう。
誰か傍にいて欲しい。
もう...もう嫌だ。

そこから救ってくれる人が現れるわけもなく、
無気力で過ごす日々の中、通りすがりに助けた人が
仲良くしてくれるようになった。
人と接するのに苦労したが、
なんやかんやで大切な人になった。

暖かくて、心が落ち着かなくて...
それでも触れたり声を聞けば安らいで...
こんな感情がずっっっっと続けばいいのに。

守らなきゃ、この人を
自分と同じ思いにさせないようにしなきゃ。
...でも、もしこの人が離れたら?

あー...ほら、また怖くなってきた。
安心の裏に潜む不安が張り付いて剥がれなくなる。
逃げられないのかな。やっぱずっと辛いや。

語り部シルヴァ

1/24/2026, 12:41:11 PM

『逆光』

私の国の王は常に明るい。
言動や国の動かし方、何もかもが自分たちの道を
照らし示してくれる。そんな存在。

ある日そんな王がひとりでのんびり散歩していた。
挨拶をしてみるとどこか違和感があった。
なよなよしいというか...どこか頼りない。
具合でも悪いんだろうか...心配です尋ねてみた。

王はしまったという表情をしたあと
すぐに諦めたのか口を開いた。

常にスピーチを考えてくれる存在がいる。
常に練習相手になってくれている。
自分が輝いているんじゃない。
輝かせてくれた挙句逆光で隠れている存在が私にはいるんだ。

そう言って王はそんな存在を思い出したのか、
いつもの明るい雰囲気に戻った。

眩しさに隠れた影が文字通り縁の下の力持ちなんですね。
そんなコメントを聞いて笑う王は
スピーチの時より自然な眩しさをしていた。

語り部シルヴァ

Next