『街へ』
重い荷物を下ろし電車に揺られて
離れていく自分の村を見届ける。
線路の隙間の穴を踏むリズムが心地良さを感じる。
今日私は村を出た。
親どころか村の人ほぼ全員に反対された。
どうせ若手がいないから。人手が欲しいだけ。
そんな魂胆が見え見えのお願いにじゃあ戻る
なんて選択肢はなかった。
もう村は見えなくなってトンネルが全て真っ黒に染めた。
不安な自分の心を表してるみたいだ。
でもきっと...大丈夫だから。
トンネルが開けた。
太陽に反射したビルたちが輝きながら迎えてくれた。
語り部シルヴァ
『優しさ』
「〇〇はやさしーね!」
「〇〇のいいところはやさしいところです。」
無邪気の裏側に感じる悪意が込められた笑い声。
先生も止めようとはするものの一緒に笑っている。
あぁ...またか。
最初こそは嬉しかった。
けれど歳を重ねていくごとにそれが
なんの特徴もない人へのお世辞だと感じるようになった。
周りはかっこいいだの頭がいいだの言われていくうちに
随分と捻くれてしまった。
それからは優しいと言われても素直に喜べないし、
その度自分に劣等感を抱いた。
やれやれ...早く目覚めてくれないかなあ。
そう願うも残念ながらすぐには目覚めそうにも無いようで、
教室内に響くつんざく笑い声はずーっと頭に響いた。
語り部シルヴァ
『ミッドナイト』
夜が始まる。
皆が眠り、世界がしんとなる。
冬の寒さのせいだろうか、
車のエンジン音もどこか静かに感じる。
僕ももう寝なきゃ。なんて思いつつも
目が覚めて寝付けなくなる。
ホットココアもマッサージもアロマも全然だめだ。
結局なんだかんだ1時には寝れるけど、
できることならもっと眠りたい。
冬仕様の布団は真っ暗な部屋で撫でると静電気が弾ける。
ふわふわでパチパチ。
暖房が効いてて暖かいのが救いだ。
スマホで時間を確認すると午前1時前。
ふぅ...そろそろ眠れそうだ。
布団にくるまり体を丸める。
...おやすみ。
語り部シルヴァ
『安心と不安』
ひとりぼっちは嫌だ。
誰もこの悲しみに共感してくれない。
真っ暗で叫んでも水の中みたいに声がかき消されてしまう。
誰か傍にいて欲しい。
もう...もう嫌だ。
そこから救ってくれる人が現れるわけもなく、
無気力で過ごす日々の中、通りすがりに助けた人が
仲良くしてくれるようになった。
人と接するのに苦労したが、
なんやかんやで大切な人になった。
暖かくて、心が落ち着かなくて...
それでも触れたり声を聞けば安らいで...
こんな感情がずっっっっと続けばいいのに。
守らなきゃ、この人を
自分と同じ思いにさせないようにしなきゃ。
...でも、もしこの人が離れたら?
あー...ほら、また怖くなってきた。
安心の裏に潜む不安が張り付いて剥がれなくなる。
逃げられないのかな。やっぱずっと辛いや。
語り部シルヴァ
『逆光』
私の国の王は常に明るい。
言動や国の動かし方、何もかもが自分たちの道を
照らし示してくれる。そんな存在。
ある日そんな王がひとりでのんびり散歩していた。
挨拶をしてみるとどこか違和感があった。
なよなよしいというか...どこか頼りない。
具合でも悪いんだろうか...心配です尋ねてみた。
王はしまったという表情をしたあと
すぐに諦めたのか口を開いた。
常にスピーチを考えてくれる存在がいる。
常に練習相手になってくれている。
自分が輝いているんじゃない。
輝かせてくれた挙句逆光で隠れている存在が私にはいるんだ。
そう言って王はそんな存在を思い出したのか、
いつもの明るい雰囲気に戻った。
眩しさに隠れた影が文字通り縁の下の力持ちなんですね。
そんなコメントを聞いて笑う王は
スピーチの時より自然な眩しさをしていた。
語り部シルヴァ