『凍てつく鏡』
テントの入口を開けると
冷気が押し込んで来るように入ってくる。
気温はマイナスレベルじゃないだろうか。
昨日まで揺らいでいた鏡も今は凍りついて波が立っていない。
服の表面も冷凍庫に入ったような冷たさだ。
あぁ...寒い。
吸う息もまばたきの瞬間に入り込む空気も
空を撫でようとして触れる空気も全部凍りつきそうだ。
既に指先の感覚がうっすら無い。
急いで暖を取らないと...
一面鏡張りの景色を見ながら
あっついココアでも飲もうじゃないか。
語り部シルヴァ
『雪明かりの夜』
今日はよく降ったからか雪が積もっている。
...明日雪かきをしないといけないと思うと少し気分が沈む。
それでもやらないと明日が無いかもしれない。
そんなふうに自分の背中を押す。
ふと今の積雪状態を確認したくなって窓を開ける。
月明かりが積もった雪に反射してうっすら明るい。
それが神秘的で少しの間見入ってしまった。
びゅうと強めの北風が一瞬吹いて我に返ったときには
体が芯まで増える寸前だった。
明日大変なんだ。今日のうちに体調を崩しちゃ困る。
急いでコタツに入って白湯を飲む。
あっつい。舌を火傷した。
語り部シルヴァ
『祈りを捧げて』
毎日誰よりも早く起きて祈りを捧げる。
過去の罪を懺悔しそれを今償うための報告のようなもの。
かつての私は弱かった。
恐怖に負け守れたものを守れなかった。
自分自身に負けてしまい何もかも失ってしまった。
今やってる行いが過去守れなかった人を
救える訳じゃないけど、
今助ければ間に合う者がいるなら助ける。
手を差し伸べるんだ。
祈りを終えてポストを見る。
依頼書だ。近くの村で魔獣が暴れているそうだ。
「レッツ...プレイ。」
十字架の鞘を抜き、刀を構える。
さ、懺悔の時間だ。
語り部シルヴァ
『遠い日のぬくもり』
数年ぶりの地元に懐かしさを感じる。
空気というのはこうも"味"が違うものなんだなと
帰ってくる度に思う気がする。
駅内はクリスマスの飾りが大量につけられ
大きなクリスマスツリーが飾られている。
昼下がりの時間帯でちょうど近くの高校生たちが
部活を終え帰路へ向かい始めるところらしく、
懐かしい学生服たちとすれ違う。
ほんの数年前にあれを着ていたと思うと
時間の流れの速さに恐怖してしまう。
それに...
すれ違う学生たちの中に微笑ましいカップルを見た。
あぁいけない。もう過去のことなのに...
首を横に振り駅を出てすぐに実家を目指した。
目の前に映る二人のカップルの残像を見えないふりをして...
語り部シルヴァ
『揺れるキャンドル』
真っ暗な部屋の中、暖房の風がキャンドルの火を揺らし
蝋に混ざったラベンダーの香りが温風と共に流れてくる。
キャンペーンのおまけで貰ったアロマキャンドルだが...
なるほど、心が安らぐ。
初めて使ってみたからどんなものか期待を膨らませすぎて不安だったが、その不安も火のゆらぎと香りが打ち消してくれた。
ラベンダーの香りもキツすぎずちょうどいい香りの濃さだ。
堪能していると、暗闇からボワッとスマホの画面が光る。
設定していたタイマーの時間が来たようだ。
想定していたよりも早い。電気をつけようか迷ったが
あと10分追加してスマホの画面を閉じる。
今は、もう少しこのままで...
語り部シルヴァ