『降り積もる想い』
外は雪が降り続けている。
朝から既に降っていて一度も止まなかった。
明日は積もるだろうか...
電車が動く程度にはして欲しいな。
そう思いながら窓を見ていると
持っていたスマホが震える。
"明日は行けそう!何時に集合する?"
少し考えてからすぐに指を動かし返信した。
もう何回もデートしたのになあ...
相手のことを考えると一気に暑くなる。
着ていた上着も脱いで
コタツの電源を切りたいと思うくらい。
...明日は晴れるといいな。
語り部シルヴァ
『時を結ぶリボン』
あるお菓子を買ってラッピングを頼んだ。
すると店員さんがどこか懐かしそうな顔をしてラッピングを始めた。
気になって尋ねてみると、どうやら昔僕と同じ注文を受けてラッピングをしたそうだ。
同じ注文内容だったからふと思い出したようだ。
そのお客さんのことについても話してくれた。
お菓子を自分ではなく孫や娘のために買っていたこと。
喜ぶ顔が見れて嬉しいから常連さんレベルで買いに来ていたこと。
たまに孫を連れてきて自慢していたこと。
しかしある日ピタリと来なくなったこと。
そこまで聞いてやっと僕のおばあちゃんのことだとわかった。
その孫は僕だと言うと店員さんは嬉しそうに
「大きくなったねえ」と言ってくれた。
語り部シルヴァ
『手のひらの贈り物』
ついさっき酔っ払いに絡まれていた人を助けた。
抵抗はできたが相手は酔っ払っているだけで悪意は無いから。
なんて言って絡まれるのをただただ受け入れていた。
幸い酔っ払いは千鳥足で
どこかへと去っていったから大事にはならなかった。
人の力になれて良かった。
絡まれていた人に気分や体調に変化が無いか聞いて
その場を去ろうとした。
すると「少し待っててください」と彼は走り出した。
彼はすぐに戻ってきて私に缶コーヒーを差し出す。
「あの、これ。これくらいでしかお返しできませんが...」
受け取った缶コーヒーは
手袋越しに伝わってくるほど温かかった。
語り部シルヴァ
『心の片隅で』
友人が死んだ。原因は自殺だったらしい。
普段からメソメソしてて、
僕がそばにいないとずっと泣いているようなやつだった。
最近笑うようになって、好きなことが楽しくなったり
「ご飯の味がより感じれるようになった。」
なんて嬉しそうに報告してくれた。それなのに...
目だけでクラスメイトを見渡す。
なにかバツが悪そうに下を向いている。
...多方そういうことだな。
友人がイジメられているのにはもしかしてとは思っていた。
ただ僕は自分から聞くことはしなかった。
だってもしそれが本当だったなら僕は
君になんて声をかければいいかわからなかっただろうから...
今更後悔したってもう遅いか。
ごめんね。僕がいないと今も寂しい思いをしているよね。
今、そっち行くから少し待っててね。
語り部シルヴァ
『雪の静寂』
雪が降るとどうしてこうも静かになるのか。
いつ吹く北風も野犬の遠吠えも全然聞こえない。
部屋のストーブの上に置いてある
ヤカンの水が沸騰してる音だけが静寂を打ち消している。
それなのに沸騰してる音が聞こえているのに
「"静か"」と感じてしまう。
コタツの熱とストーブの熱。
静かで...暖かい。
みかんの皮を剥く速度がどんどんゆっくりになる。
もう既にウトウトして寝てしまいそうだ。
首の踏ん張りが...限界...
そのまま勢いよく額をテーブルにぶつける。
「...っ」おかげで目が覚めた。
額をぶつけた音ですら静かな空間に飲み込まれた気がする。
語り部シルヴァ