『「こっちに恋」「愛に来て」』
"良ければ会いましょう!"
"ご飯だけでもいかがでしょうか?"
"会おー"
めんどくさそうなメッセージが次々と来る。
別に肌が見える自撮りや話し相手募集した訳でもない。
それなのにこんなに異性からメッセージが来ると
魂胆が見え見えすぎて呆れる。
みんなそんなに飢えているのだろうか...
リアルでそういう経験が無いから
藁にもすがるほどなんだろう。
私にはそういうのは理解できない。
一時の感情で空いたものをひたすら埋めようと
必死になっているのはもはや可哀想に感じる。
むしろ少しでもそういう感情を剥き出しにできるほど
自分に素直なのは羨ましい。
"○○をブロックしました"
"○○はあなたをブロックしています"
"○○ブロックしました"
はぁとポチポチ操作した後全てがめんどくさくなって
アプリを消した。
語り部シルヴァ
『巡り逢い』
『あ』
春の眠気を誘う陽気の下散歩をしていると偶然にも
高校の頃の後輩と出会った。
地元の高校から離れた場所に住んでいたのに
こんな場所で出会うなんて思っていなかった。
この後輩とはよく話が合って部活内、
いや高校内で一番仲が良かった。
ただ関係を壊したくなかったから何も言わず大学に行き
地元を飛び出た。
こうしてまた会えるとは思っていなかった。
話が盛り上がり、空も気付けば茜色に染まり始めていた。
そんな頃合に当時の謝罪と想いを伝えることにした。
「あの頃はごめん...」
「大丈夫ですよ。今ならあの頃の
先輩の気持ちわかりますから...」
「それと、俺ずっと...!」
あともう一言。俺の言葉は詰まりなんでもないと濁した。
後輩は何も聞かなかった。俺の言葉を予想していたんだろう。
後輩の左薬指が夕日を反射して輝いていた。
これ以上は野暮ってやつなんだろう。
「じゃあ、そろそろ帰るよ。また出会えてよかった。」
「私もです。先輩、お幸せに。」
後輩の背を見送ったあと、俺の左薬指の指輪がキツく感じた。
後輩とまた会えただけでも俺は嬉しかった。
それと同時に、もう一生会わないようにと願った。
語り部シルヴァ
『どこへ行こう』
明日急に休みになった。
唐突に訪れた休日を折角だから有意義に使いたい。
さて...何をしようか。
一日中ゲーム...はいつも通りで味気ない。
スマホで近くに何があったかを調べるほど
遊びで外出することはない。
近くにはゲーセン、カフェ、ショッピング...
思った以上に色々あった。
ここに引っ越してきてから数年、
全然開拓していなかったんだなと思い知らされる。
たまには、行ってみようか。
とりあえず調べてみて面白そうな場所をまとめた。
年甲斐もなくベッドでワクワクしてしまう。
明日は良い一日になるといいな。
語り部シルヴァ
『big love!』
「はい!どーぞ!」
むふーと彼女は誇らしげに両手を広げて構えている。
尻尾があれば絶対に振ってそうだ。
ふらふらと吸い込まれるように彼女の前で
膝から崩れ落ちて全体重を預ける。
わっと驚いた声がしたがすぐに頭を撫でられる。
髪の毛が彼女の手によってわしゃわしゃと音を立てる。
雑な撫で方だが、そこが妙に安心する。
「ふふ、お疲れ様。」
柔らかい肌に優しい手、甘い声が疲れていた体に染みる。
同じ石鹸を使ってるのに彼女特有のいい匂いがする。
「...ありがとう。」
「いーよ。そんな君が大好きだからさ。」
体を起こし彼女を抱きしめる。
「俺も、大好き。」
彼女から微笑んでありがとうと強く抱き締めてくれた。
語り部シルヴァ
『ささやき』
「ほら、我慢しないでさ...」
「い...嫌。折角ここまで我慢できたのに...」
優しさの裏にある誘いが私の決心を揺るがす。
「頑張る君も素敵だけど、たまには許してあげなよ?」
この人の声はどうしてこうも自分を許したくなるのか...
いや、ダメだ。ここで許せば自分が頑張ってきた意味が...
「僕は好きなことを好きなだけする君も見てみたいなあ」
あー...ダメだ。ずっと私が折れるまで続ける気だ。
...明日からまた頑張ろう。
諦めてポテチの袋に手を伸ばす。
「じゃあ、コーラ持ってくるね〜」
満足気な声で映画鑑賞の準備が始まる。
ダイエット...明日からちゃんとやります。
そんな反省の念を込めてポテチの袋を開ける。
好きなコンソメの香りが反省の心を吹き飛ばした気がした。
語り部シルヴァ