『変わらないものはない』
工事中の看板と掘削機の音が乾いた空気に響く。
最近家からも工事の音が遠く聞こえてきたが、
ふと散歩に出かけたタイミングで工事現場を目撃した。
小さい頃よく親に連れてって貰った
この町の数少ない公園だった。
遊具も人気も無くなって老人ホームを建てるそうだ。
公園だった場所の入口付近で近くに住む奥様方が
井戸端会議をしている。
工事の音で聞こえないがこことは
全く関係の無い話をしているんだろう。
色んな思い出があったが...
人が使わなくなってしまったのなら仕方がない。
それでもやっぱり寂しさが無いとは言いきれない。
思い出がコンクリートに塗り替えられ、
工事の音に割られていくのが耐えられずイヤホンで
耳を塞いだ。
語り部シルヴァ
『クリスマスの過ごし方』
いつも通り出勤して、帰りのご飯はちょっと贅沢に。
ご飯でお金を散財してまあクリスマスだからいっかと
思いつつ明日も頑張ろうと床に就く。
...予定だったんだけどなあ。
外は猛吹雪でホワイトクリスマスどころじゃなくなった。
今年の猛吹雪は異常で朝から真っ暗でお昼時になっても
吹雪が止まなかった。
結局出勤どころか買い物にすら行けず、
今日という日を終えてしまった。
いつもの休日みたいな無駄に時間だけを
食ってしまった気がして嫌になる。
食べたかったのはチキンだったのに...
もう日も落ちた時に行ったところで無駄だろう。
いつものご飯とコーヒーを済ませて寝るまでの時間を過ごす。
破天荒な1日だった。
独り身だったからのんびりできたと考えればまあ...
ヨシとできるな。
そう思いつつ、外の景色を眺めながら
明日の準備をすることにした。
語り部シルヴァ
『イブの夜』
「ふぅ...」
今日も今日とてパソコンで趣味の創作を終わらせる。
ネタによって文章の長さが変わっちゃうのは反省点かな...
昨日投稿した創作の反応を見る。
コメントこそないが、創作を見てると
書かれたプロフの人がいいねをくれている。
最近同じ人がいいねをくれたりコメントをくれたりする。
もっと色んな人が楽しめる作品を作りたいな。
そう思いつつ今までの創作を眺めていると、DMが届く。
1枚の画像が送られてきたようだ。
画像の内容はメモに書いた手紙のようで、
ふと僕を見つけてくれたこと、内容が脳裏に想像できること。
まさかのまさか。こんなに素敵なメッセージを
いただけるなんて思いもしなかった。
イブの夜だが変わらない日々を送るもんだと思ってたが
これは...言葉が詰まるほど嬉しい。
いつもより嬉しいプレゼントを貰ったイブの夜。
今からでもチキンを買いに行こうかな。
語り部シルヴァ
『プレゼント』
残業続きで今日も定時には帰れなかった。
気付けばすでにみんな帰っていて僕だけしかいなかった。
続きは明日やるか...そう思いデータを保存して退勤する。
廊下を歩いていると、人影を見た気がした。
やれやれ、疲れが随分と溜まっているようだ...
肩を動かしながら歩く。
退社すると外の異常な寒さにまた肩がこりそうになる。
もう日付が変わりそうなのに街は働いている人が
ちらほらいる。今から仕事の人もいるんだろうか...
疲れに疲れた体は右へ左へとふらふら進む。
「そこのお兄さん。よければどうぞ!
新作のドリンクお配りしてます!」
歩いていると急に視界にドリンクが差し出された。
伸びた手を辿るように顔を見つめる。
優しそうな店員さんのような人が笑顔で差し出していた。
「え、あぁ、ありがとうございます...」
受け取り最大限の笑顔をしたつもりでまたフラフラと歩く。
後ろから
「お仕事お疲れ様です!明日も頑張ってくださいねー!」
と大声が聞こえた。
振り返りお辞儀してまた歩き出す。
優しい言葉と応援、貰ったドリンク剤に
寒さが少し和らいだ気がした。
語り部シルヴァ
『ゆずの香り』
普段は湯気しかないお風呂が今日は
ほんのりゆずの香りが広がる。
冬至が訪れたのでゆず風呂をやってみた。
実家だと自然とあったが一人暮らしになると
全然やってこなかった。
生活に余裕が出来てきたのでやってみることに。
久しくやってなかったゆず風呂は
普段のお風呂を豪華にさせた。
さっぱりする柑橘系の匂いは清涼感を引き立てる。
それでいて体を芯まで温めてくれるような感覚。
肩までしっかりと浸かると普段よりも
じんわり温かくなっていくのを感じる。
「...はぁあ。」
情けない声が漏れてしまう。
ゆずをひとつ入れるだけでもこんなに違ったのか...
懐かしくも初めての経験のような気分を味わえた。
明日も仕事だけど普段より頑張れそうだ。
ただ...気持ちよすぎてお風呂から出たくなくなってきた。
ご飯も洗濯も終わらせてないから出ないとだけど...
あと少し...あと少しだけお風呂に浸かっていよう。
語り部シルヴァ