別れ際に
「これでボクたちは恋人でも友達でもない、赤の他人だ。」
夕焼け空も暗くなり始めた空のように
君の顔に影ができ始める。
俺たちは別れを切り出すことになった。
高校の頃から付き合い始めたが、大学生になり
お互い大人になるにつれて価値観や考え方がズレてきた。
俺たちが未熟だったのもあるが、大人に近づくたび
お互いの距離が離れるなんて思わなかった。
すぐに諦めた訳じゃない。
あーだこーだと試行錯誤した結果今に至る。
色々と頑張ったのに大切な人を幸せにできなかった。
それがお互いにとても悔しかった。
ふたりが別れを選択した時なんて目が腫れるほど泣いた。
もう完全に夜が来る。
ここに来るのも今日で最後だ。
最後のサヨナラを伝えるために帰る前に振り返る。
笑顔の君の腫れた目と流れる涙は逢魔が時の世界じゃ
隠しきれていなかった。
「じゃあね。今までありがとう!」
それでもいつもの口調の君を見て伝えるはずのサヨナラは
震え声になってしまった。
最後の最後の別れ際に、俺は呪いを受けることになった。
これから...一生忘れることのない呪いだ。
語り部シルヴァ
通り雨
最近、不思議なアプリを手に入れた。
偏頭痛がキツい時があって、友人に話すと天気予報アプリを
入れるといいと勧められ入れることにした。
有名な会社の天気予報アプリじゃなく、
聞いた事のない会社名。
気にはなったが、偏頭痛に関係している低気圧が来ることを
通知してくれると書いていたのでそこを信頼した。
結果的には大成功だった。低気圧が来る30分前に
教えてくれるので事前に薬を飲めばやり過ごせれるし、
どれほどの強さかも教えてくれる。
それに雨が降ったり晴れたりの予報もかなりの的中率で
驚いている。
今日も帰り道このアプリに頼りながら帰る予定だ。
最寄り駅までのルートを調べていると、
天気予報アプリから通知が来た。
"数秒後、通り雨に注意してください"
通り雨...?
そう思った矢先、右斜め前から雨が迫ってきた。
雨がまるで生きているかのように斜め前から
まっすぐ通過して行った。
駅を通過するように通って行った雨の後を眺めながら
呆気に囚われていた。
スマホには"通り雨が通り過ぎ去りました。"
と通知が来ていた。
語り部シルヴァ
秋🍁
優しくなった陽の光、早くなった日没、乾いた涼しい風。
もう秋だということ嫌でも知らされる。
つい先週まで日中はクーラー無しだと
寝苦しかったのにこうも変わるのか...
ベランダで夜風に吹かれながらタバコを吸う。
夏はタバコの火が熱くて堪らなかったが、
これから温かく感じるのだろう。
俺はこの季節が好きだ。
ん夏よりも涼しく冬より暖かい。
こんなにも過ごしやすいのに期間が短いのが残念だ。
秋の彩りある季節も美味しい旬の食べ物も
あっという間で寂しくなる。
だからこそこの季節のことを大切にしたい。
タバコも吸い終わったからベランダに戻ろうとした。
腕に違和感を覚え見てみると蚊に数カ所噛まれていた、
...これさえなければずっと秋が続けばいいのになと
思いながら痒くなった腕をかき部屋に戻った。
語り部シルヴァ
窓から見える景色
住宅街を右から左へ、
一面の海を右から左へ、
トンネルの暗闇を右から左へ...
電車はどんどんと景色を置いて進む。
電車から見える景色は新鮮で
同じ景色が続かないから飽きない。
それも柔らかいソファのような座り心地な座席に
座って見れるのだから贅沢もいいところだ。
なんとなく行きたいところを決めて
特急券を買って向かってる途中。
さて、着いたら何をしてどこへ行こうか。
やりたいことを考えながら見る景色はとても輝いて見える。
この電車は目的の駅まではノンストップだ。
到着までこの車窓から見れる流れていく景色を
楽しもうじゃないか。
語り部シルヴァ
形の無いもの
形の無いものっていえばだいたいは
"心"を思うかべるんじゃないかな。
辛い時は心臓じゃなくて心が痛む。
嬉しい時も心臓じゃなくて心が跳ねる。
心って心臓のようで違う。
僕らの感情を表すためのもの。
ハートの形をイメージしてるかもしれないけど、
結局は形すらない不思議なもの...
それでも僕たち人間や犬や猫、花やロボット...
全ての者には心がある。
なぜそう言い切れるかって?
僕たちの言葉は基本的には人間以外には理解されない。
でも犬や猫に寄り添えば信頼してくれる。
ロボットに優しくすればロボットは温もりを感じる。
それってみんなに"心"があるからじゃないかな...
なんて思うよ。
...大っぴらに言うのは恥ずかしいから言えないけど。
そう言って君は頬を赤らめる。
そんな話を聞いたせいか、心が暑くなった気がした。
語り部シルヴァ