「はなればなれ」
…頑張ってね
それが最後の会話だった。
顔は見せなかったけどきっと泣いていた。
色んな思い出がよぎった。
私だって辛かった。
訳あってはなれて暮らさなくてはならなくなった。
私にとってただひとりの親だから。
悲しかった。
強く生きていかなくてはいけない。
ひとりは孤独だ。
でも自分で選んだから振り返らない。
前に進む。
いつか笑い話になる日が来るといいな。
「秋風」
肌寒い。薄暗い。枯れた葉が落ちる。
寒い時期は嫌い。暑い方がいいな。
なんだか悲しい気持ちになっちゃう。
ようやく暑い季節が終わったけど、海にも行けないし、かき氷も食べられないし。
でも、今しか見れないものがある。
今年も銀杏、紅葉は綺麗だな。
きっとこの肌寒さがあるから綺麗なんだよな。
寂しさも運ぶけど美しさも運んでくれる。
寒いけど少し我慢しようかな。
「また会いましょう」
さようなら。向こうで待ってるね。
まだ来ちゃだめだよ。
美味しいもの沢山食べて、綺麗なものを沢山みて。
沢山笑って、沢山泣いて。
私がいけなかったところに連れてって。
そう言い残して彼女は亡くなった。
追いかけたい。
一人で数十年生きていかなきゃいけないなんて。
ただの苦痛でしかない。生きた心地がしない。
それでも…追いかけずにいるのは。
彼女に色んな景色を見せるため。
彼女はもういないんだから結局一人でみてるただの人なんだけど。
でも私の中では生きているからね。
受け止めきれないけど、まだ頑張らなきゃね。
また会いましょう。
「スリル」
待ち合わせまであと5分。
脈が上がる。どんな人が来るかな。
初めてのデート。顔は写真でしか知らない。
ヤバいひとだったらどうしよう…。
人が多すぎる渋谷での待ち合わせ。顔すらあまり分からないのにまずすぎる。目が回りそう。
「はじめまして!」
一度だけ聞いたことのある声が後ろから聞こえる。
振り返るのが怖い。
新たな恋愛への一歩。
緊張しながら振り返る。
「飛べない翼」
窓から飛んでいってしまった。
小さな頃、鳥を飼っていた。
写真を見返すと頭に乗っている写真があった。
家族に聞くと頭に乗られて怖くて泣いていたそう。
怖かったけどちゃんと可愛いと思った記憶もある。
ある日窓から飛んで逃げて行ってしまったそう。
すごく昔のことで覚えていない。
悲しかった記憶は鮮明にある。
私は追いかけることも出来なくて
飛べない翼をもらった気分。
自由に駆け巡る姿が今でも思い浮かぶ。