→無風、居心地が悪い。
唐突に、風が凪いだ。
まるで扇風機のスイッチが切れたように。
それまで寒いくらいに吹いていて、
不愉快さまで感じていたのに、
いざその風が止んでしまうと、
どうしようもなく不安になった。
空に手を伸ばす。
一か八か、
扇風機の電源ボタンを探す。
しかし、
人間の手の届く場所にあるだろうか?
ないだろうな。
無風、
居心地が悪い。
テーマ; 届かないのに
→メーデー
船舶『私』号は、発熱で操作不能!
メーデー! メーデー!
本船は、只今パンドラ海域に迷い込んだ模様!
嗚呼!
幽霊船『黒歴史』号が!!!
メーデー! メーデー! メ………――
テーマ; 記憶の地図
あきませんわ、
熱がマジで上がってきよった。
→混沌に昏倒する。
風邪を引いた。今時分の風邪は何とやら云うけれど、まだ梅雨だもんとグズる、そんな夏風邪。
冬場よりも高い気温のため、熱に浮かされると途端に汗だくになるので、寝不足が続いている。
さぁ、この混沌をどのようにやり過ごそうか。
マグカップにハチミツ(輸入食材店の安いヤツ)少々、レモン汁(キャロットケーキのフロスティングの残り)を1センチくらい、シナモン(これもキャロットケーキの残り)おろし生姜(すりおろして冷凍しといた)ちょびっと、そこにお湯。ホットレモネードの出来上がり。
積読を漁る。取り出したるは、中江兆民著『三酔人経綸問答』。発熱状態は、酔っぱらいの政治談義を読むに、ほど良い臨場感が味わえる、はず。よしよし、思った通りだ。ふわふわと、人様の政治哲学に触れる。良い気分だ。次に選んだ本は、ベンジャミン・クリッツァ―『モヤモヤする正義』だ。今の私は正義云々よりも鼻がモヤモヤしてるけど。
あ~、鼻セレブ、ほしい。アカン、ボーっとしてきた。レモネードも飲み干したし、寝るわ。
テーマ; マグカップ
→ねぇねぇ、質問!
もしも君が私だったら、
今の私よりもシアワセを掴んでた?
成り上がっちゃったりしてた?
……まぁ、
そうなっても、それは私ではないんだけどね。
テーマ; もしも君が
→秘めたる寝台
眠る貴方の胸に頭を乗せる。
規則正しく繰り返される鼓動。
人によってその神秘のメロディは違うのだとか。
貴方の命の音に、私は耳を澄ませる。
テーマ; 君だけのメロディ