→レースを編む
編み上げたばかりのレースのテーブルクロスに水を通す。久しぶりにかなりの大作だ。
ところで、水を吸ったレースはとても重い。よっこらしょと、軽く脱水。
プロの人が見たら、あまりの雑な扱いに開いた口がふさがらない知れないが、気にしない。日常使用の素人作品なのだから。
そこそこ水の切れたテーブルクロスをベランダに干す。
天気の良い日。ベランダのガーデンチェアに腰掛ける。
風に揺れるレースが、木漏れ日のような繊細な影を私に降り注いでくれた。
テーマ; 木漏れ日
→あいのうた
ひねくれものの
こころにとどく
あいのうたを
だれかおしえて
それをきくと
こころがぽかぽかしたり
せつなくなったりするらしいね
いいね
そういうの
捻じ曲げる甲斐がありそうだね
テーマ; ラブソング
→1年に1度
彼女から手紙がやってくる。1年に1度。
手紙を開くと、大学時代から変わらない彼女の文字。
「お誕生日おめでとう」
そして添えられる、彼女らしい地に足のついた短文。
今の御時世に、私たちはお互いの携帯番号もメールアドレスも知らない。別にいらない。
私たちには手紙がある。
1年1度の手紙がある。
テーマ; 手紙を開くと
→今はまだ……
今はまだ、デバイス越しにしかインターネットに介入できないが、遠い未来にはその電子世界と脳が直接繋がって、まるで現実世界のように自由に行き交うことができるかもしれない。
情報網という往来を、仮の体で探索する。現実世界のように、しかし誰とは知らない人と視線を交わし、もしくは瞳をすれ違わせる、そんな出会いと別れがあるかもしれない。
そんな物語を想像しながら、私は現実世界の電車に揺られている。
何となしに、私は手元のスマートフォンから視線を上げた。前に座っている人と目が合った。
お互いに何事もなかったかのように瞳をすれ違わせ、自分の手元に目を落とす。
小さな機械の画面を見る。
今はまだ、そんな世界。
テーマ; すれ違う瞳
→生命
下を向いているばかりの顔を上げた
その先に
空が
宇宙がある
青い青い
蒼い碧い
天がある
上を向いた瞳に映る
その先に
天がある
青い青い
蒼い碧い
涙が溢れる
空が
宇宙が
私に繋がる
生きていてもいいと
誰も言わないけれど
生きていてもいいと
私は思った
テーマ; 青い青い
(追記・05.03 22:55
酔っ払っていると発想は自由だ。
無様な万能感よ。私を虜にするな)