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11/17/2025, 2:17:51 PM

毎日、通りすがりに見ている自販機のラインナップが変わっていた。青一色だった購入ボタンの色が下に向かうに連れて赤色に変わっている。赤色に変わっている半分以上はコーヒー缶で、残りはミルクティーやコーンスープといったこじゃれた物で埋め尽くされている。商品自体はまだ入っていないのか、温め中なのか、準備中の文字が踊るボタンに金額が浮かんでいない。買えるようになるまでにはまだ時間が必要みたいだ。
外の景色よりも自販機の仕様に季節を感じる僕は人として終わっている気がしなくもないが、イベントらしいイベントなんてここ十年ご無沙汰な、年がら年中、会社という建物内で生きている僕にとって自販機という機械が唯一の拠り所だ。この字面ですら終わっているな。
財布を探ると、ちょうど百円玉があった。
別に飲みたいものがあったわけではないけれど、僕は投入口に百円を入れ、青色のコーヒーを選ぶ。
がたん、と音を立てて落ちた缶コーヒーは今の時期には少し冷たい。僕はポケットに入れて会社へと向かう。
もうすぐ、冬がくる。