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7/12/2025, 1:47:41 PM

窓辺に風鈴を置いた。
すきま風でチリチリと鳴る。

目の前に浮かぶのは、向日葵畑を持った田舎の祖父母の家のような憧憬。
スイカでも食べながら、縁側で猫と昼寝する。
チリチリ。チリチリ。その時間が永遠のように感じられて、照りつける日差しに目を閉じる。

…なんて、思い浮かぶけども。自分の祖父母の家は田舎でもなく、実家から30分の住宅街で。物心ついた時にはリフォーム済みの、小綺麗な家。エアコンの効いた部屋でテレビを見て、飼っていたのは犬だった。

ああ、でも。何だか自分は「ない夏」にいた気がする。
チリチリ。風鈴はいつも私を連れていく。
あの日へ。いつまでもたどり着かない、あの夏へ。


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「風鈴の音」

7/11/2025, 2:16:21 PM


ハワイ行きの広告をみた。
だから一昨日は、南国のリゾート地へ。

戦闘アニメをみた。
だから昨日は、世界を救った正義のヒーロー。

今日みたのは御伽噺。
だから今晩は、王子様が囚われた私の手を取って、「一緒に逃げましょう」と愛の逃避行に誘う。手の甲にキスなんてしちゃったりして。
私はそれに頷いて、窓から飛び出すの。
全てを投げ捨てて、
お城の外まで、
もう少しで、


ピピピピ、と私を現実まで連れ去ったのはアラーム音。
ああ、今日こそ正夢であってほしかったのに!

いくら心で逃避行しても、体まで迎えに来てくれないと意味が無いのよ。王子様!


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「心だけ、逃避行」

7/10/2025, 12:45:23 PM

通学路に、曲がったことない道があった。
といっても道が1個ズレるだけであって、寄り道禁止のうちの高校ですらお咎めをくらわないような道。
普段一緒に帰らない友達が、当たり前の様にそちらを通るから、隣を一緒に歩いた。

他より大きめな家。
放置された洗濯物。
家の壁を這う名前も知らない蔦。
街灯がぼんやり光って。
2階の窓にピアノが見えた。

ちょっと歩けばすぐいつもの道に戻った。知ってるのに何も知らない。
もうそろそろ、高校も2年目なのになあ。


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「冒険」