やさしい雨音
それは、心にそっと降りそそぐ静かな記憶。
ぬれた街角、ふたりの傘がふれあった瞬間――
言葉にできなかった想いが、
雨音に溶けていく。
やさしく、切なく、そして確かに残る恋の余韻。
一歩だけ 近づけた気がして
隣を歩けた日のことを 今も覚えてる
笑った君が 眩しすぎて
触れたら壊れそうで 言葉を飲み込んだ
君は誰かを想っていた
気づかぬふりで そばにいた
名前も知らない誰かのことで
涙こぼした君を ただ見てた
手を伸ばせば 届きそうで
でもその心(こころ)は遠すぎたんだ
僕だけが 君を見ていたのに
君は誰かを想っていた
そっと包みこんで
不安な夜も、涙の午後も、
君のそのぬくもりが、そっと僕を包んでくれる。
言葉はいらない。ただそばにいるだけで、
世界が優しくほどけていく――
それが、恋だと知った始まりの日。
昨日と違う私
昨日は、朝からトイレの詰まりと格闘して、昼は落ち葉の山と戦って、夕方には児童がドッジボールで割った窓ガラスの片づけ。正直、「もう勘弁してくれ…」と思った。
だけど今朝、校門の前で「おはようございます!」と笑顔で挨拶してくれた一年生の女の子がいて、ふと気がついた。あの子たちにとって、私はただの「用務員さん」じゃなくて、「学校の一部」なんだなと。
昨日の私は疲れてばかりだった。でも今日の私は、ちょっと胸を張って校内を歩いている。落ち葉も、壊れた窓も、子どもたちの成長の一コマだと思えば、掃除する手にも力が入る。
そう、昨日とは少しだけ違う私。今日の私は、なんだか悪くない。
空に溶ける
君の名前を 風が呼んだ
だけど君には 届かない
すれちがうたび 少しだけ
時間が止まればいいのに
笑顔ひとつで 心は
ひらひら 浮かんでいく
何も言えずに うつむいて
空に 君を描いてた
ほんの少しの 勇気だけ
あれば 違ってたかな
片想いは やさしくて
痛くて きれいだった