ぱらりぱらりと音がする。どうやら、雨が降ってきたようだ。予報では、しばらく続くようだが、あまり強くはならないらしい。ふと、窓を開けたままだったことを思い出す。この頃、ベランダで可愛いがっている植物がしずくを浴びて気持ちよさそうに揺れている。さながら、雨とダンスしているようだとしばらくながめていた。
「やさしい雨音」
曲のタイトルは思い出せない。思い出せるだけのキーワードを入力した。今は、ネットで探せば聞けるからとても便利だ。引っ掛かったさまざまな情報が出てくる。ああ、きっとこれだ。クリックして、動画を開けばスピーカーから流れて来る。たしかにこれで合っている。
幼い頃、言葉の意味もたいして分からずに。多分、アニメのエンディングテーマ。好きだったかと言えば、逆の印象を持っていた気がする。子供の頃は、音楽や歌声が暗くて怖くて不気味だと思っていた。それなのに不思議と世界に引き込まれて、途中でテレビを消したりチャンネルを変えたことは無かった。
「ああ、こんな歌詞だったのか」
あの頃は怖いばかりの曲が、大人になった自分に刺さって仕方ない。
「歌」
珍しくあなたが落ち込んでいる。
こういう時、どうしたら良いのだろうかと悩んでしまう。言葉を掛けるにしてもなんと言おう。
どうしたの?
何かあった?
話を聞こうか?
それとも何もせずに、そっと置いてほしいだろうか。
こういう時は、人それぞれだから少々対応に困ってしまう。迷ったけれど、放っておけずに隣に静かに腰を下ろす。そして、こう言った。
「ねえ、そばにいるよ」
生きていたら、いろんなことがある。
ずっと笑顔でいられたら良いけれど。そんな日ばかりは続かない。どんなことがあっても、どんなあなたでも良い。強くなれなくてもいい。あなたの弱さも全部を見せてくれたなら。きっと受け止めてみせる。いつも勇気をくれる。あなたのやさしい笑顔が戻るように。そして立ち上がることが出来たなら、また一緒に歩き出せるように。
だから、どうかそばにいさせてほしい。たいせつなひと。
「そっと包み込んで」
今の自分で満足しているか、そう聞かれると微妙だ。かと言って、不満かといえばそうでもない。けれども、代わり映えの無い日々にこのままで良いのだろうかと、不安は絶えず頭の片隅にある。こんなことを繰り返しながら、昨日と違う私が出来上がっていったら良い。
「昨日と違う私」
自然はとても早起きだ。
鳥たちが、朝日とともにさえずりだして。
朝からいったいどこへ行くのだろうか。
仕方なくベッドから、起き出してカーテンを開く。
刺すような朝の日差しがまぶしくて思わず目を細めた。
「おはよう」
億劫だが仕方ない。
さあ、今日がはじまる。
「sunrise」