静寂に包まれた部屋で独り踊る
カーテン揺らした外の匂い
踏切をわたる終電車
でもここは暗いから輸入だけ
ひっそりと ぶつけないように
腕を回し 指を滑らす
体勢を変えながら緩急をつけて
誰の目も意識してない奇行なら
これこそ私の本性のはずなのに
皆の心にも置いてきたらしくて
衝動の糸が切れて頭出した情動
見えてないふりして踊り続ける
別れ際に本性が出る。「無粋でも伝えたい」が勝つから、いつも後悔に暮れている。彼に二度と会えないのはこんな自分に神が与えた罰ならいっそ楽なのに。現実は酷く正確に私の本性を映す鏡であり、逃げる気はなくとも弱音はいくらでも膨らむようだ。あの時の言い訳を、十数年ぶりの第一声を、今日も考えてしまう。
通り雨は錆びたトタンをいじめる
メンテナンスの音をかき消してくれるから
雨は好きだ
特にたまにしか来れない僕に都合よく降ってわいた
にわか雨はさらに好きだ
廃工場ゆえの雨漏りに目をつむれば
ここ以上の環境も望めないし
今できることをするしかない
最後のナットを締め終わったので
培養液のガラスに手を当てる
僕の近づいた影に気づき彼女は目を開く
心がないビー玉のような瞳で僕を見つめている
ああ良かった、まだ好きだ
まだ彼女を救ってあげたいと思ってる
その事実をつねって刻み込んでいたら
いつのまにか通り雨が去っていたので
その日は帰った
3日後、漏電で電源が落ちていたらしい
彼女は腐った培養液の中で亡くなっていた
あっけなく
また雨が降る どうせ通り雨だ どうせそうなる
形のないものとは
その形を形容する言葉がないってこと
だから、何々のようなとか、質感とか、色とか
周りの情報を増やして輪郭をなぞる
言葉にしにくいものも
言葉を尽くせばいつか伝わる
伝えたいが形を与える
伝わってほしいが影を生む
いらなくなった気分の日
自分を見失っていたと気づいた日
どうにかこうにか言葉を紡ごう
言葉にならない想いでも必死にしたためよう
あなたの影の形を丁寧に丁寧になぞる作業
言葉に尽くし続ければいつか!いつか!
声が聞こえる
解放を志す小さな小さな決意が
我が内なる道徳律の破らんとする衝動が
僕のゲバラも歴史に挟まる被造物だが
理想へタブの木の如く手を伸ばし続ける
止揚を裏腹に据えていない
我が上なる星空の散らかりかたを
可変的可能性の爪先に懸けて真似る!