さよならは言わないで。
お揃いの新しいマグカップ、
貴方の為に買い溜めされたカップラーメン。
次のデートで着てねとプレゼントされた白いパーカー。
眠れない夜布団で話した将来のコト
新婚旅行は海外にでも行こうか、なんて
ねえ全部まだだまだだよ
だからさよならは言わないで?
また会いましょう。
駅の改札口、予報には無かった大雨
さてどうやって家に帰ろうか。
疲れたから早く布団に潜りたいのに。
誰も悪くないのに朝見た爽やかな気象予報士に
嫌味ったらしく愚痴とため息を吐いて。
いや、知ってるよ?
別にあの気象予報士が悪いわけじゃないんだよ?
明日は別に休みだし風邪ひいてもいいやなんて思って
お気持ち程度のハンカチを傘代わり。
雨にうたれる可哀想な女になりますよ。
“これ、使ってください“
隣から不意に聞こえた声と渡された紺色の折り畳み傘
”僕は普通の傘持ってきてるんでお姉さん使って下さい”
そのまま行ってしまう彼を必死に追いかける。
いつ返せばいいの、こんな新品みたいな傘
“じゃあそれを返すついでに、また会いましょう?”
飛べない翼。
2人の体温で温まった布団の中で私の頭を撫でるキミ。
天使みたい、と愛おしそうな顔で見つめるんだ。
ギューっと抱きしめられて背中を摩られれば
自分のコンプレックスな骨張った肩甲骨を思い出す
キミはそれを知っていながら言ってくれるんだ。
本当は天使なんでしょ?
翼がそろそろ生えてきちゃいそうだね、って。
あまりにも真面目な顔しているから笑ってしまうけど
キミが言うなら私は天使なのかも。
でもね、翼が生えてきても私は飛べないの
キミにこのまま一生抱きしめられてたら
翼、動かないもんね。
脳裏。
6:45 おはようの挨拶。酷い寝癖をお互い笑う朝
8:00 行ってらっしゃいのハグ。離れたくないねって
12:00 この前2人で食べたオムライス。今日は1人
15:00 昨日君が食べたお菓子の袋こんな所に落ちてたよ
18:00 夜ご飯できたよ。
今日もね、気付けば君とのことばかり
頭から離れなかったんだよ
笑い合えるなら寝癖が酷くたって構わない
毎日のハグは喧嘩しても必ずしようね
オムライスは2人の方が美味しいな
ゴミはちゃんと捨てておいてよね。
頭からも私からも離れないでね。
18:05 おかえり
意味がないこと。
「好きな食べ物は何ですか!」
「オススメのお店ってありますか!」
君の目の前にいるのは甘いカフェオレを持って
ふわふわしていて私とは違う可愛らしい女の子。
私ももっと可愛ければなあ、
あんな風に表現できたらなあ。
「好きなタイプってどんな感じですか!」
「恋人っているんですか!?」
でもね、聞いても無駄だよ。
私のお気に入りのブラックコーヒーを
手に持った君がニコニコしながら携帯の画面の
ハマっているお店を教えてくれる。
今度は一緒に行こうよ、なんて。
ねえ、無駄だよ。
だって私が1番近くで知ってるんだから、
そんなに聞いたって狙ったって、意味ないこと、だよ♡