10/22/2024, 8:04:17 AM
『声が枯れるまで』
「僕から離れないで」
行ってしまおうとする彼の手を掴み、膝から崩れつつも、縋り付く。
「ちゃんとやるから!演技も声出しだって、今まで以上にちゃんとやるよ、」
僕を拾ってくれたあの日から今まで手を抜いた事など一度もない。壁にぶつかりそうになっても持ち合いの勤勉さで努力して、励んできた。
「それに…」
目の前の彼の顔を下から見上げる。
「僕は、貴方に全てを捧げてきた、!!…何もかも、貴方が所望してきた物全て!!!」
ーーなのに…なのに、!!なのに!!!!
「なんで離れようとするの!僕はまだ枯れてない。少なくとも声が枯れるまでは捨てないでくれるって、言ったじゃないか、…」
だんだんと声に勢いがなくなって、小さくなってついには、声を出すのを止める。手を離すとゆっくりと、彼は、歩き去っていってしまう。その後ろ姿を見えなくなるまで、ただただ見つめていた。
あぁ、そっか、僕はとうに……。
枯れていたんだ。