本気の恋 というのが
どういうものと定義されるのかはわからない
でも なんとなく
本当に本気だったら
本気の恋 という言葉では
追いつかないのではないかなぁ
知らんけど
カレンダー
昔はただ
日付を確認するだけだった
この頃は
ああ もう少しであのひとの誕生日
この日はあのひとの命日
あと幾日で あのひとに会える
誰かを思って
眺めるようになった
自分の生きる時間を
誰かの生きた時間を
思い起こすようになった
こうやって人生は
少しずつ広がって
少しずつ離れがたいものになる
喪失感と向き合える心を
準備できていなかった
喪失を恐れるあまり
得ることを恐れた
何もかもが怖かった
今でも 不安が騒ぎ立てる時がある
お前の手元には何も残らない
誰もがお前から去っていく
何もかもが その手を その指の間を
すり抜けていって 戻らない
それでも
いまの私には
繋ぎ止めたいものがある
いま在る事を喜ぶものが
繋いでおきたい手が
出会うことは いつか別れるということ
それでも
いま共に在ることが
私の往く先を
きっと 明るく照らす
そう思わせてくれたすべてに
どうか あたたかで
この上ない祝福を
ありったけの しあわせを
踊るように
見えたひともいたのだろう
必死にもがいて
生きていた私を
浮かせた足を 次は
どこに踏み出せば良いのか
手を 振り上げて良いのか
握ることが正解なのか
前だけ向けば良いか
時には振り返るべきか
分からず生きていた
私のことを
人が生きる姿は
うつくしいか
あなたの目にそれは
うつくしく映ったか
私は
うつくしく
生きてきたか
貝殻に住めたなら
さぞ 素敵だったろう
白い 巻き貝がいい
中は暗く ひんやりとして
ゆるやかな曲線に腰掛けて
てのひらで触れると
きっと 冷たいけれど 優しいのだ
壁に耳を澄ませると
遠い 波の音がする
たまに外を覗いて
明るさと騒がしさに驚いて
自分の住処の静けさに
その素晴らしさに
思いを巡らせながら
静かな午後を過ごすのだ