心の灯火が
ふっと 消えた夏
ひんやりとした机
床を擦る椅子の脚
全ての音を反射して吸い込む廊下
よく風邪を通すスカート
中庭の 緑の眩しさ
喧騒
笑顔
足音
暗い場所から眺めるものは
すべて明るくて 光り わたしを刺した
世界がいちばん
きらめいて見えた夏
不完全な僕を
僕は愛している
この不完全さこそが
僕を 僕たらしめている と思う
しかし
この不完全さを
時に恥じてもいる
そんな僕を
僕は愛している
香水瓶を陽に透かす
窓辺に
ちいさな海ができた
光を色々に散らして揺れる
私だけの
素敵なかおりの海です
今日は
この海を少しだけ浴びて
香りを借りて
素敵をまとって出掛けます
私だけの ちいさな よいかおりの海です
言葉はいらない、ただ・・・そこにいるだけ
存在するだけで、人を救える人がいる
救おうとしても
どんなに救いたいと願っても
救えない人もあるのに
救いたい人は救えないまま
今日も誰かを 救う人がいる
突然の君の訪問。
破天荒なところはあったが、連絡なしに来るひとだとは思っていなかったので、驚いた。
会えた嬉しさと心配と、少し困惑もあったがうまく隠せたのではないかと思う。
なまぬるい微糖の紅茶を飲むと、あの夜を思い出す。
どうしたのと問う私に、君はなんともいえない笑顔を返した。
突然の訪問に続き予期せぬものを見せられて、しばらく言葉を忘れてしまった。
それ以上踏み込ませない、硬く脆い盾のような笑顔だった。
よく分からないまま、ホットの紅茶を買った。
私と同じように、ストレートが好きなのは知っていた。ストレートを選んだつもりだった。けれど微糖だった。こんなことは初めてだった。私も、動揺していた。
今夜の選択肢を間違えば、その先が全て崩れてしまうと確信していた。
あたたかなボトルを握っても、指先が気持ち悪い冷え方をした。
私の動揺が選ばせた微糖の紅茶を君が飲んで、やっと少し空気が弛んだように思えた。
それでもなお、無意識に呼吸が浅くなるような、そんな空気だった。
緊張に締まる喉を舐めていく、なまぬるい微糖の紅茶。
その心地の悪さを、冬が来るたびに私は思い出すのだ。