泣かないで
言わない、言わない。
絶対に言うものか!
泣かないで、なんてあなたを閉じ込める言葉。
どれだけ私の胸が痛くても。
どれだけあなたが苦しそうでも。
絶対に、絶対に!
口には出さないと、もうとっくに決めているんだ。
星座
昔、つんとした空気の夜、キャンプ場のようなところで星を見た。
小さな光の粒が、まるで空から迫ってくるような存在感に見惚れていた。
横には悩みを抱えた人がぽつり。
何度もわたしに声をかけては、わたしの反応の無さに黙っていった。
最後には無言で去って行ったようだった。
後になって申し訳なかった気がしたけれど。わたしはその時、頭上の光しか目に入らなかったので、下手に相槌を打つよりは良かったかもしれない。
今でも星座は分からないし、夜に星を見上げる事はほぼない。
ただ、あの時に夜空から目が離せなかった時に、少し星座を知っていたら、もっともっと遠い輝きを見続けていた事だろう。
形の無いもの
カタチの無いものに縋りつく。
駄目だと分かっていてもとめられない。
どうしても、どうしても、どうしても。
あなたの唇が紡ぐだけの、不確かな愛の言葉に縋りついていたいの。
喪失感
からっぽになった、なんてことはない。
ただ、悲しみと諦めが胸の内で泣いていた。
貝殻
ふと店頭に並んだ商品に目をひかれた。貝殻などの入った、海を思わせる瓶だ。
そういえばいつか貝殻拾いに行こうと言っていた相手がいた。
友達だったあの子はいま元気だろうか?
私はしばしその商品を眺めて、すぐに興味を失ったので歩き出した。
叶わない約束だけがたくさん絡まって、やがて大人になって完全に千切れた。
もう約束の糸が元に戻ることはない。
拾いに行くはずだった貝殻は、きっと砂がすりつぶしたに違いない。
そう、思う事にした。