『突然の君の訪問』
一人暮らしになってから1年。
もう1年か…
彼女は1年も帰ってこない。
どこへ行ってしまったのだろうか。
ご飯も毎日用意しているが、帰ってこない。
まったく、君は気まぐれだな。
でも君のそういうところが好きだ。
甘えてくるときもあるが、ツンツンしているときもある。
今日もご飯を用意して、外に置いた。
ミャァー
…!!
声がした方へ行くと、そこには彼女がいた。
突然帰ってきてどこ行ってたんだよみーこ。
お、飯食ってくれたんだな。
お帰り。可愛い可愛い俺の彼女みーこ。
ミャァー
『雨に佇む』
嫌よ!おいてかないでちょうだい!
私は大好きだった子に捨てられてしまったわ。
私はわるくないのに!
あの子が私と遊んでくれなかったのが悪いのよ!
親を事故に合わせただけなのに!!
まったく、こんなにも美しい私を土砂降りの中、捨てるなんて、どうかしてるわ!!!
誰か拾ってちょうだい…ゴミ収集車が来る前に早く…!
それに、泥で汚れてしまうわ、
あら?小さな可愛い女の子がいるわ。
こんな土砂降りの中佇んでいるなんて暇そう。
こっち来てくれないかしら。
…あ!気づいたのね!こっちよ!!
こっちにいらっしゃいな!私と遊んでちょうだい!
あら!拾ってくれるの?ありがとう!嬉しいわ!!
私はインベルよ。ラテン語で雨って言う意味よ。
これからよろしくね。ずーっと遊びましょうね!!
遊んでくれないといたずらしちゃうわよ?
一昨日妹が星になった。
お母さんとお父さんに聞いたら急に倒れたと言われた。
大好きだった妹。
どうして急に。
妹の遺品整理をしていたら、日記を見つけた。
1月 日
たのしいな。
すごくたのしいな。
けど、おこられちゃった。
てがいたいよ。
1月 日
たのしいな。
すこしつかれた。
けど、まだまだ頑張らなきゃ。
てと足と体中いたい。
短い文ばっかり?
どうしてだろう、妹は日記書くの好きなはずなのに?
次のページを見てみると。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いお父さんお母さんごめんなさいごめんなさいごめんなさいいやだいやだもっと頑張るから許してください。
私はもう一度前のページを見た。
縦読みだったのだ。
たすけてと、何度も、私は気付けなかった。
大好きだった妹は親から虐待。
気付けなかった。
1月☓日『私の日記帳』
『向かい合わせ』
私は二人暮らしをしている。
椅子も2つあるし、食器も二個づつある。
私はいつも通り朝ごはんを2人分用意して、向かい合わせに座っている彼の前に置いた。
向かい合わせに座っているのにいつも彼と目が合わない。
話しかけても返事はないし、私のこと嫌いになっちゃったのかな。
私は彼の前に花瓶に入ったワスレナグサを置いた。
ねぇ、私をおいてどこ行っちゃったの、帰ってきてよ。
私は、向かい合わせに座っている透明な彼に必死に話しかけた。
『やるせない気持ち』
昨日お兄さんが空になった。
大好きだったお兄さん。
私のたった一人の味方だったお兄さん。
私はお兄さんの作ったご飯が好きだった。
もう食べられない。
この間まで、食卓を囲んでいたのに。
私のせいで。私を庇ったから。
一生このやるせない気持ちで生きていかなきゃいけない。
苦しい、寂しい、何もできなかった。
私はお兄さんの写真の前にオレンジのスイートピーを置いた。
愛されなかった私にとってあの日々は幸せだった。
たとえそれが犯罪だったとしても。