このような人に彼はなりたかったのです
助けてくれたら、咄嗟にありがとうと言える人に
転んだ人がいたら、大丈夫かと声をかけれる人に
相手を傷つけてしまったら、ごめんなさいと言える人に
彼はなりたかったのです
でも彼はもう遅すぎました
彼の心にはすでに
分厚い雲が無数にも覆い
枯れ果て、曲がりくねっていました
もう願っても遅すぎました
捻くれ者の彼は、せめて人の心を持ちたかったのです
枯葉
彼は枯葉の餌食になりました
彼は傲慢過ぎたのです、生意気過ぎたのです
彼は枯葉を見つけると決まって
その1枚1枚を踏み潰しながら歩いていました
仕方の無いことなのです
彼は何も知りませんでした
知らなくていいのです
彼のことなど、枯葉のことなど
あなたはなにも知らなくていいのです
今日にさよなら
ねぇ聞いた?
僕がクルッと回ったくらいで人間様の中に
絶望する人がいるらしい
何十億もの人間様が僕の上に乗っかって
せわしなく動く動く動く
人間様、知ってますか?
貴方たちが想像しているよりもずっとずっと
宇宙は広く深く自由なのです
今日だけは特別に、明日とやらに絶望した人のため
宇宙への招待状を差し上げます
お気に入り
僕の体に刻まれた火傷のあと
今もくっきり残ってる
猫にひっかかれたような
鋭い縦線が背中の羽を引きちぎった
その火傷のあとにキスしたい
僕はもうどこへも飛べやしないだろう
誰よりも
そんなはずないのに
必死に手に入れた幻想を身にまとって
醜いアヒルの子は今日も
この世界で息をします
あんたは誰よりも可愛い子だと
幼い頃から母鳥に言われ続けた
醜いアヒルの子は
自分の顔を見たことがありません
醜いアヒルの子は
自分がこの世で1番強く、美しい鳥であると
信じていたのです
母鳥よ
本当にその子のことを思うのであれば
鏡を渡してやりなさい
そして、その先も
その子を愛してやりなさい