十年後の私から届いた手紙
十年後の私から
ふいに届いた封筒は
少しだけ陽に焼けて
けれど、どこかあたたかかった。
「大丈夫」
最初の一行は、それだけ。
けれどその一言が
今の私の胸の奥で
ゆっくりと灯りになる。
十年後の私は
相変わらず不器用で
でも、今より少しだけ
自分を信じることが上手になっていた。
涙をこらえた日も
言葉にできなかった痛みも
全部、無駄じゃなかったと
未来の私は静かに書いていた。
「あなたが選んだ道は
どれも間違いじゃなかったよ」
その筆跡は
今の私より少し大人びて
でも、ちゃんと私のままだった。
眞白あげは
封を閉じる前に
未来の私はこう結んでいた。
「どうか、今日のあなたが
自分を嫌いになりませんように。
十年後の私は
あなたに心から感謝しているから。」
バレンタイン
ほんのひとかけらの勇気を
包み紙にそっと忍ばせて
あなたへ渡す道を
今日だけは歩いてみる
甘い香りに紛れて
言えなかった言葉が
胸の奥で溶けていく
受け取ってくれなくてもいい
笑ってくれたらそれでいい
それでも
この気持ちは確かにここにある
一年でいちばん
心がやわらかくなる日
わたしはあなたに
小さな想いを手渡す
眞白あげは
待ってて
少しだけでいい
あなたの時間の端っこに
わたしの名前を置いておいてほしい
追いかけられない日も
声を届けられない夜も
それでも心は
あなたの方へ歩いている
急がなくていい
焦らなくていい
ただ、消えずにいてくれたら
それだけで十分なんだ
わたしはここで
あなたの影が揺れるのを
静かに、静かに
待っているから
眞白あげは
伝えたい
伝えたい、という一語には
胸の奥でまだ形にならない
あたたかさと痛みが同居している。
言葉にすればこぼれ落ちそうで
沈黙すれば届かないままで
その狭間で揺れる想いが
今日もあなたの中で灯っている。
風に乗せれば軽すぎて
石に刻めば重すぎる。
だからこそ、
あなたの声でしか運べないものがある。
たった一行の手紙でもいい。
震える指先のままでもいい。
伝えたいと思ったその瞬間から
想いはすでに、誰かへ向かって歩き出している。
眞白あげは
この場所で
この場所で
風の音を聞きながら
ひとつ深呼吸をする
昨日までの言葉も
胸の奥に沈んだ痛みも
ここでは少しだけ静かになる
誰かの期待でも
誰かの評価でもなく
ただ、私が私でいられる場所
歩いてきた道の影も
これから向かう光も
どちらも抱えたまま立ち止まる
この場所で
もう一度、始められる気がした
眞白あげは