秋の夕暮れ、帰路を辿る。
ああ、去年の今頃は高校生活最後の文化祭の準備で大荷物を抱えながらこの道を歩いていたっけ。
そういえば、後輩から文化祭に遊びに来ませんかって連絡がきてたな。
下校時間を過ぎても片付けが終わらなくて、日直の先生に怒られながら逃げるようにして正門を駆け抜けたっけ。
あの時は、あの瞬間だけは受験のこととか勉強のこととか全部忘れて、皆で最後の舞台に向けて全力で打ち込んでいた気がする。
大切なものは失ってから気づく、と言ったところだろうか。
"青春"なんて在り来りな言葉で一括りになんてされたくないくらい、一日一日が、一分一秒が、かけがえのない大切なものだった。
もちろんあの日々が永遠に続く、なんて夢見でた訳では無い。時間というものは絶えず流れるもので、私たちはそれに逆らうことは不可能なのだから。
大学だって楽しいし、新たな友人も出来て、世界も広がった。
それでも、あの少し閉鎖的な、あの空間を懐かしいと思ってしまう。
あの教室も、校庭も、下駄箱も廊下も一つ一つが私の思い出の宝箱なんだ。
きっとまだ心が成長しきってない私は、今はもう自分の世界ではないあの空間で目一杯"青春"を過ごしている貴方たちに嫉妬してしまいそう。
だから、文化祭に行きたい気持ちもあるけど今はやっぱりやめておこうかな。
黄昏時、タソガレドキ、タソカレ、誰そ彼時
秋の夕暮れ、1人であの森に近付いてはいけないよ
深い深い、紅に飲み込まれてしまうから
その森はね、夕暮れ時が1番危ないんだ
誰そ彼時、それはヒトと怪異の境界が曖昧になる時間
嗚呼、今日もまたひとり、ヒトならざるモノに魅入られてしまったね
いつだって彼奴らは、君たちのことを狙っているんだ
だから、あの森に近付いてはいけないよ
でも、少し気にならないかい
決して触れてはいけないと言われるものほど触れてみたくなるのがヒトってやつさ
ふたりなら、きっと大丈夫だよ
ひとりではダメと言われているけれど、ふたりならきっと大丈夫さ
だから、だから、1度だけ、一緒にあの森に行ってみないかい
嗚呼、今日もまたひとり、魅入られたみたいだね
好奇心はヒトを隠す、なんてね