わたしの理想のあなたは、
勉強ができて、スポーツも万能で、スマートにエスコートしてくれる人。
でも、あなたはその逆。
勉強なんかいつも赤点で、スポーツしてるとすぐ転ぶくらいどんくさい。その上エスコートなんてされたことない。
でも、勉強を教えると必ず「ありがとう」って言ってくるし、転んだあとに「またやっちゃった」ってヘラって眉を下げてこっちに向けて笑うのがどうしようもなく好きだ。
エスコートじゃなくても、落ち込んでる時に声をかけてくれるあなたを心から愛してしまっているんだ。
こんな世界なんて終わってしまえ!!!
カバンをベッドに叩きつけながら叫んだ。
着いているキーホルダーはすごい音を立てて飛んで行った。
あぁクソ、なんでこんなことになったんだ。
わたしはただ、「普通」の人のように「普通」に生きたかっただけなのに。
わたしは昔から浮いていた。
わたしがなにかを発言しては「それは変だよ。」ってみんな顔を見合わせる。
ふざけんなよ。わたしの「普通」はこれなのに、なんであんたらに馬鹿にされなきゃいけないんだ。
自分の意見も人に貶されるこんな馬鹿でクソみたいな世界なんて今すぐ終わってしまえばいいんだ。
明日は世界が終わっていますように、なんてありえないことを空に向かって3回つぶやく。別に流れ星なんて流れている訳でもないのに、意味もなくつぶやく。
ただ、もしかしたら明日は人に認めてもらえるかな、なんて馬鹿みたいな期待をする。
明日になったら自分も変われるんだろうか。
そんな他力本願で行動を起こさないわたしがいやだ。
ああやっぱり明日世界が終わればいいのに。
耳を澄ますと
さわさわと流れている風の音が聴こえた。
今日は憎たらしいくらい快晴と呼ぶのにふさわしい青空だ。
周りは空気がすんでいて、自然の音以外なにも聞こえない。
そう、なにも。
今年もこの日がやってきてしまった。
君がここに眠ってから、もう何年経つんだろうね。
ここで耳を澄ませても、なにも、聞こえない。
声がないのは寂しいけど、せめて君がしあわせに過ごしていることを願ってるよ。
じゃあまた来年。
ルールがないと、わたしは生きていけない。
ルールがなくなると、なにをしていいのか、なになら許されるのかが分からなくなってしまう。
よく、ルールってなんのためにあるのって言う人がいるが、わたしは基準だと思う。
ルールはダメなことはダメ、逆にここまでなら許されるのかがわかりやすい。
もちろん、理不尽なルールはあるべきではないが、
それ相応のものには従うべきだ。
「自由」な人からは、とても狭く、檻の中に入っている可哀想な人だと思われるかもしれない。
けれど、基準がない世界の方がわたしにはよっぽど難しそうに見える。
もしかしたら、生まれた時からルールに従っているからこその思考なのかもしれない。また別の国で生まれていたら、もっと「自由」に生きていたのかもしれない。
でも今のわたしにとって、基準のない「自由」な世界とは、分からないという鎖をつけられて歩くようだ。
ルール
雨。
しとしとと降っている。
天気予報は100%間違っていなかった。
今日の天気はこれからも最悪らしい。
カバンを背負って傘をさして歩くと、もうびしょびしょで、ついでに髪もぐしゃぐしゃ。
心模様は最悪だ。
おはよーと挨拶しながら教室に入るが、
雨のせいかクラスメイトはいつもより少なかった。
そんな中、いつもと同じように席に座っている友だちがいた。
今日雨なんて最悪じゃない?
ちょっと冗談まじりで声をかける。
すると友達はにこにこと、
えぇ?そんなことないよ!最高じゃん!
なんて思いもしなかった返事がきた。
なんでなんでと驚きながら聞くと、
だって今日は風が強くないし、日の光もないよ!めちゃ嬉しい!
だって。
そういえば、この子はいつもチートアイテムで来ていた事を思い出した。
もー車いいなぁ。うわ待って、くつ下湿ってんだけど…
雨に対する恨みを呟きながら、急いでくつ下を脱いだ。
けど、いつもより明るくご機嫌な友だちを見たら、今日の雨なんてなんてことないように思えた。
友だちのおかげで今日の心模様は曇りくらいになったかもしれない。
今日の心模様