★1つだけ(Dom/sub)
出会った時からの決まり事。
お互い本気にはならない
あいつも俺もただなんとなく気がむくか誰も捕まらない時に呼んでプレイするだけ
そこに愛だの友情だの面倒な感情はない
俺はsubであいつはDom ただそれだけなんだ
昔から痛みや強めな命令口調が苦手だった
だから相手に合わせてどんなプレイもすると有名だったあいつに声をかけたのは俺からだ
あいつの行きつけのバーを調べて1人でいる時に声をかけた
「初めまして、少し話しいいですか?」
「どうぞ〜」
「あの、えっと…俺…」
自己紹介をした方がいいのか、それともいきなりダイナミクスの話をするか、バーに初めて来た俺には分からなくて考えていると
「なに?今日の相手探してんの?」
「えっと、どんなプレイにも付き合ってくれるって聞いて…」
「今日はもう予定あるから明日の夜でもいいなら付き合うけど」
「では、明日お願いします」
「ん、じゃ明日の19時にここで」
「分かりました」
その次の日あいつは悪びれもせずだいぶ遅れてきた
自分から言っといて遅刻するなんて…とは思ったがとりあえず気にしないことにした
「こんばんは」
「おぅ、待たせたな。で、早速本題に入っていい?」
「はい」
「とりあえず確認だけどお前はsubでいいんだよな?」
「はい、プレイの内容は場所を変えて話してもいいですか?」
その日あいつから言われたのは1つだけ
本気にならないこと
あいつは噂通り俺の希望通りのプレイをしてくれた
プレイ中言い返しても嫌な顔をせず受け止めてくれるし俺が上手く出来なくても頑張ったね、と褒めてくれる
その後も何回かプレイをお願いしたがその度に遅刻はしてくるわ、俺の後に待ってるsubがいるからすぐ帰ると平気で俺に言ってくるし、だらしなくてデリカシーのない俺の嫌いなタイプでこいつとは友達にはなれないと思った
★エイプリルフール
「俺、お前のこと好きだわ」
「はぁ?」
本気とも冗談とも分からないくらい軽く笑いながらの突然の告白に驚く
僕の親友はそんなこと言うキャラじゃなかったはずだが…
…なるほどエイプリルフールか
「そんな事言うなんて珍しい。僕もあなたの事好きですよ」
冗談ぽく言えただろうか
いつもクールなのに時々子どもっぽく笑いながら揶揄ってくるそんなところが大好きだなぁと思いながら見ると
笑った顔の彼と目が合った
「じゃー帰ろっか」
「さっきのはなんだったんだ?」
「別にー」
★心と心
運命の番に会いたいとずっと思ってきた
本能で惹かれるというその番に会いたくて
ずっとずっと会える日を楽しみにしていた
でもそんな俺の隣でお前はずっと俺を見てたんだな
何も言わず、ただの友達みたいに笑い合って
俺の些細な一言で傷ついて。
初めてお前の涙を見た時、どうしようもなく愛しくて
なぜか俺まで悲しくて
離れたらダメだと思った
心はずっと昔からお前に惹かれてたんだな
★秋
「もうお前なんて知らない!」
そんな言葉とは裏腹に目には涙を浮かべ去っていく
振り返りもせず去って行く背中を見ながら
今日は9月にしては涼しいな…と雨の降りそうな空を見た