『レモン』


部屋の中に広がる柑橘系の香り

あの頃の自分が好きだった

あの頃の貴方の好きな香り

夏が来るとほのかに香る甘酸っぱいこの香りは

君を目で追っていた頃の日々までも

鮮明に風に乗せて吹かれてく

『彩』


君がいなくなった家で

少し広くなったかなー、とか考えながら

朝を迎える

君がいなくなったこの家は想像より遥かに広くて

静まりかえっている

君がいなくなったこの日々に

今日も朝日が光をもたらし色をつけてゆく

『想い』


君に会いたいという願いは

空高く舞い

君が好きだというこの思いは

どれだけ濃く、澄み切ったあの海よりも

もっともっと濃くて

もっともっと深い

『清夏』


静かな丘

吹き抜ける風

ほんのり香る青葉の匂い

自然で優しい光

夏を感じさせる蒸し暑さ

どことなく来る気怠さに

すこし浮かれる自分もいた

『知らぬ世』


そちらの世界は陸の上

こちらの世界は海の底

金に輝くこの髪を

海の魔女に渡したのならば

魔泡の力に身を任せ

貴方のもとへと行きたいわ