『Love you』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「月が綺麗ですね」ってなんて答えればいいんだろう。
「そうですね」と返して無粋なやつと思われるのは癪だけど、
「死んでもいいわ」だの「私もです」だの返して、もしも相手に世間話以上の意図がなかった場合、確実に会話のキャッチボールができないやつ認定される。それは不本意だ。
つくづく日本人は婉曲表現が好きだよなあ。
まあ十中八九言われることはないだろうから悩む必要ないか。
(Love you)
今日あなたが退職した。
8月、私は働き始めた
レジはあなたに教えてもらった
とても綺麗だと思った
見つめていた
仕事にならないくらい
なんとか仕事に慣れてきた
ママチャリに乗るあなたを見つけた
納得と落胆
家庭の事情を知った
退職を知った
少しでも関わりたい
近くを通った、匂いを嗅いだ、長いまつげを見た、遠回りしてマスクの下見た
食べ終わりのレンゲを見て血迷った気分になったこともある
美味しくない手作りチョコ
お世辞でも「ありがとう」は嬉しい
その時の目見とけば良かった
そして今日退職した
恥ずかしい言動をしてひどく後悔している
私はまだ1年は働くつもりだから、その間に一目惚れは多く経験すると思う
けれど忘れない
あなたに片想いした19の冬
※物語です
「I love you」
「…へ?」
幼なじみとの帰り道突然放たれたその単語に足を止める。物心ついた時から、いやそれよりも前からずっと一緒にいる幼なじみの恵佑は時々変なことを言う。
彼は何が本気でどんな意図で発言しているのか分からない。もう何年も一緒なのに単純な私は泳がされてしまう。掴みどころがないというか、そんな性格だ。
「って日本語で愛してるじゃん?」
_今度は何を言うかと思ったら
ため息混じりに頷く。
「それって2つの場面で使われるらしいよ」
「んっと、どういうこと?」
突然どうしてそんな話になるのかは謎ではあるが、少し興味深い内容でもあり聞き返した。
「家族に対して日常的に言うI love youと
恋仲の相手に対してI love you
どっちも愛してるって意味だけど込める意味は全然違うでしょ?」
私の顔を覗き込み少し口角をあげる恵佑。切れ長で形の整った瞳が私を捉える。そうかもね、と適当に相槌を打って目を逸らす。
やっぱり恵佑は何を考えているか分からない。
私は無愛想な方で読めないとよく言われるが、恵佑そういう感じでもない。
優しそうに見えて意外とドライで、チャラそうに見えて付き合ったこともない。
そこに魅力を感じる人も多いようだが。
「あおちゃん」
「ん?」
突然名前を呼ばれそれだけ返す。気づいたら私より後ろを歩いていたようだが気にせず進む。
「愛してる」
またいつものかと適当に促そうとした。しかし、後ろを振り返ると少しだけ頬が紅潮した恵佑の姿があった。
「どっちの意味か分かる?」
途端に理解し自分の頬も染まっていくのがわかった。
〘Love you〙
愛してる、なんて口が裂けても言えないので、せめて慰めにもならない言葉を吐いた。
「Love yourself.」
これは私があなたに贈れる最大のアドバイス。納得なんて出来ず、しばらく苦しむあなたは変わらぬ孤独を見るだろうが、いつかは気付いてくれると信じている。
そして、そのときにあなたは知るだろう。永遠の揺り篭などないのだと。
Iをください(テーマ Love you)
1
(俺って何。)
三連休二日目。
休日出勤も二日目で、20時も過ぎた会社で疑問に思う。
明日は会社には行かない。
両親が外出するため、その間、90過ぎの祖母の面倒を見なくてはならないからだ。
三連休だが、どこにも行けない。
職場は人が足らず、あちこちから人が抜かれて崩壊しつつある。
名刺には3部署分の名前が書いてある。
兼職させられて、3部署から仕事が来る。
これが日常だなんて笑ってしまう。
休みの直前には横の職員が異動になった。
(また人数が減るのか。)
2
随分前から、頭の中に変なやつがいる。
こんなところ辞めてしまえと囁いたり、あるいは体を気遣ったり。
自分自身の声なんだろう。
イマジナリーフレンドと俺は勝手に呼んでいた。
元々見た目などない疑似人格だ。
最近は人格が変わったのか、増えたのか、未来の娘を名乗るようになった。
( お父さんが結婚してくれないと、私が生まれないじゃない。)
と、のたまう。
( 諦めてくれ。)
もう40過ぎなんだ。
この年で、ブラック企業勤めで働き詰め。たまの休みは介護だ。
両親の休みはその時だけ。
それ以外の日はずっと祖母の面倒を見ているのだから、文句も言えない。
付き合っている人はいない。
今から付き合う人を探すなら、もうそれは祖母、両親と続く介護要員を探すようなものだ。
どう見ても詰んでいた。
( Love me)
いいとも。
そのままの君を心の中で愛するだけなら、愛しましょう。
誰かと結婚して君を生むのは、無理目だろうけどさ。
3
(Love you)
ん?
どういうこと?
(お父さん、誰にも愛されていないみたいだから。せめて私くらいは、とか。)
とは言え、君は私自身のイマジナリー人格だしなぁ。
いや、自身を愛せない人間はだめだ、とも言う。
そういう意味ではありなのか。
(しかし、I love youじゃないのか。 )
( Iがないから。今のお父さん。)
ひどいダジャレだ。
自分を愛し、自分を持つ。
まあ、大事なことだ。
子どもがいたら、きっとそういうことも伝えただろう。
結婚しないまま、年を取ってしまったけれど。
日々の仕事でいつの間にか、自分自身すら見失って。
(Iがないのか。)
そんな状態で誰かを愛するなんて。
( Love youは、無謀だ。)
残業は、終わるまでもう少しかかりそうだった。
"LOVE YOU"
「あなたは私にとって手の届かない存在
そんなあなた様に仕えることができて幸せです。」
私はそんな言葉をこぼしてしまった。
私にとって命の恩人であり、憧れの存在だから
私には手の届かない存在だった。
それもそうだ貴族と平民が対等なわけない
私達は戦争をしていた。
そんな中私は仲間を見捨てて逃げた
臆病な小娘だ
そんな私を拾ってくれたんだ
見捨てず、救っていただきこうして尽くせてるのです
私は後ろ指を刺されても文句を言えない
だけど優しく私を庇ってくれた。
ありがとう。そんな言葉では表せきれないほど
'感謝'をしている
だからこそ私はあなた様が大好きです。
穏やかな波の音が響く、夜の浜辺。
月は雲に隠れて、暗い海と向こう岸に見える明かりだけが目に映る。
波打ち際から少し離れたところに黒のタイツと靴下、白のスニーカーを綺麗に重ねて置いて、そこから遠ざかるようにして、右へ右へと、私は裸足で砂の上を歩いていた。
夜の砂浜はひんやりとしていて、一歩一歩踏みしめる感触がやけに心地良い。
緩やかな潮風に靡く髪を片手で抑え、対岸の風景と海に目を遣って進みながら、ああ、この時を好きな人と過ごすことができたらなあ、とぼんやり思った。
もしそれが現実のものだったら、こんなふうに感傷的に彷徨うのではなく、二人で着衣のまま腰までを海に浸からせ、互いに水をかけあっているのだろう。私が好きになるのは、一緒にそのようなことをしてくれる人だろうから。
実際、私には想いを寄せている人がいる。いつも教室の隅っこで読書をしている、物静かな男の子だ。
その人はどのような学校行事でも、自分の出番以外のときは読書をしていた。ライトノベルというやつばかり読んでいるらしかったのだけれど、真剣に目を通している彼のその姿になぜか惹かれ、気づけば、見かけたときには必ず目で追うようになっていた。教室でも、図書館でも、街中でも。
接点などないのに好きだと思うのは、脳が勘違いしているからだと何度も思った。しかし日に日に想いは増すばかりで、私の胸は、すぐにでも破裂しそうなくらい、苦しくなっていった。関わりを持つために声をかけようとしても、話題が思いつかなくて、幾度となく断念した。それでも、彼へのこの気持ちは諦めきれなかった。
だから私は、彼が読んでいたと思われるライトノベルを、片っ端から読んでいくことにした。
そのうちのひとつ、『学校一の美少女は俺と戯れたい』という作品に、主人公とメインヒロインが海辺で楽しそうに水遊びしている場面があった。この作品は私が読んだライトノベルの中でも一番共感できたやつで、特にこのシーンがお気に入りだった。彼が教室内で友達と話しているときに「僕もこんな青春したいな」と言っていたのが耳に入ったから、その補正もあってのことだと思う。
四十冊くらい読んだけれど、相変わらず、彼に話しかけることはできなかった。
いたずらに時は過ぎていって、学年が上がって彼とまた同じクラスになっても、状況は変わらない。
そこから目を逸らすように、私はこの浜辺をうろうろするようになった。
このままじゃいけないことはわかっている。
でもきっと、振られることのほうが怖いのだ。
だから傷つかないように殻に閉じ籠って、現実から逃避している。
私は、私を変えたい。
そう思うけれど、なかなかその一歩を踏み出すことができない。
近づきたい、壊れたくない、という二つの想いが、複雑に絡まり合っている。
……それでも、好き。
この想いに、嘘偽りはない。
「好き、なの……」
呟く声は、波の音に溶けて消える。
そのあと、一際強い風が吹いて、目を瞑った。
風が止んで視界を開くとき、ふと空を見上げる。
雲の隙間から、月の光が私を照らしていた。
明日から私が殻を破れるよう、お月さまが励ましてくれているようだった。
「Love you」
I love you.
Thank you for always supporting me.
I can do my best every day because of you.
〜あなたの事を愛してる
いつも傍で支えてくれてありがとう
あなたがいるから毎日頑張れる〜
第二十六話 その妃、頼りの綱は
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廃離宮に場所を移してからは、面白い程に事が進んだ。それも、仲間に引き込んだ人たちの惜しみ無い協力のおかげだった。
その甲斐あって、短期間でかなりの情報量が手元に集まった。それでも十分ではなかったから、一度広場で注目を浴びることにしたのだ。
国民たちからの軽蔑。
妃たちの敵意、妬み。
高官たちの憎悪、悪意。そして……殺意。
何百何千という夢を渡り歩く羽目にはなりそうだが、大方これで無事情報は集まったと言っていいだろう。
問題があるとすれば、夢の順番が選べない事と、今回はどれだけの間眠りにつくのか、一切予想ができない事くらい。
……夢は、いつか醒めるもの。
だから、終わるのを待っていればいい。
ただ寝首だけは掻かれないよう、予め対処はしておかないと。
『……暫く匿って欲しいというのは……』
『できれば私がここにいることも、誰にも知られたくはないの』
瑠璃妃には既に少女の事で世話になっていた。無事に幼馴染みとも再会させることができたし、本音を言えばこれ以上彼女に借りを作るのは避けたかったのだが。
『……あの方と喧嘩でもされたのですか?』
『そんなんじゃないわ。まあ詳しい話はしないことが多いから、向こうは私に腹は立っているでしょうね』
でも、頼れるのは他にいなかった。
『御事情は存じ上げませんが、もしもここで貴女様を迎えた場合、私は何をすれば宜しいのですか?』
『私の世話をして欲しいの。食事に入浴、排泄も頼みたいわ』
長丁場になれば、体に褥瘡ができる。
国一つ滅ぼす前に、自分の身が滅びるようなことになれば、この提案に乗ってくれた皆の足を引っ張りかねない。
聡明な瑠璃宮なら、最後まで話を聞いてくれるだろう。秘密を打ち明けても、信じてくれると思う。
でも、この事をあのあんぽんたんに話してみろ。
……最後まで話を聞かないまま過保護全開で暴れまくり、挙げ句の果てには計画をおじゃんにしかねない。
『承知致しました。一先ず私が臥せっていることにして、侍女たちに伝えましょう。私一人だけでは手が回らないこともあるでしょうから、侍女頭には付いてもらいますが、それでも宜しいですか?』
『何も聞かないの? どうして?』
『……そうですね。貴女様でも、異性の方に裸を見られるのは恥じるのだなとは思いました』
『え? いや、そういう意味ではなくて』
『それに、彼の心労も、なるべく少ない方がよいでしょうから』
『それは……』
きっと、長い間姿を消せば捜し回るのだろう。
できればさせたくなかった。
でも、そうせざるを得ない。
だって、選んだから。
『愛されているようで』
『あなたでも冗談って言うのね』
“また、あえる?”
……苦しい時間は、短い方がいいのよ。
#Love you/和風ファンタジー/気まぐれ更新
⚠私事デス、
ご注意を
無遅刻無欠席無早退
の僕ですが
今日体がとても暑いでございます
2週間後成績決まるテストでございます
果てさて月曜休むべきか
気合いで行くべきか
正直行かなきゃなって思う、
迷いどころだなあ
【根性と気合い】
休むべきと思う方
▶▷▶✋(ハートでお願いします、)
【Love you】
前を歩くたかしの背中を見つめながら、咲は柔らかくため息をついた。
毎日見ている背中だ。
部活をやっていないとはいえ、高校二年にもなると背中は大きい。
たかしの少し丸まった背中さえ、咲にはとても愛おしく思えてならなかった。
「何、後ろから。隣、歩かないの?」
「いや、友達に見られたら、恥ずかしい」
学校からの下校中。
本当は隣に立ち、話しながら帰りたいと思っていた咲だが、それはどうにも出来ない理由があった。
咲とたかしは異母兄弟である。
つまり、帰る家が同じなのだ。
こんなところを友達、もしくは自分のことを知っている人に見られたら、余計な詮索をされかねない。
友達ならまだこう、配慮とかしてくれるかもしれないけれど、知り合いとか同級生は噂におびれをつけて流す可能性がある。
おかしな噂を流されかねない。
それだけは勘弁してほしかった。
「なんか、後ろついてこられるのもなぁ。変な感じなんだよな」
たかしは頭を掻き、面倒くさそうな顔をして、再び前を向いた。
たかしの歩幅は広い。
油断すると彼はいつも遠くに行ってしまう。
駆け寄っては近づき、止まる。
また駆け寄っては近づき、止まる。
頭をよぎるたくさんのことを打ち消して、咲は苦笑いを浮かべた。
そもそも、高校一年生までまったく会った事がなかったのに、二年になって突然、「彼は異母兄弟です。仲良くしてください」なんて。
そんなの出来るはずもないのだ。
どうしても、たかしを兄弟としての目線で見る事ができない。
例えば手を繋ぎながら帰ってみたい。
彼が兄弟じゃなかったらいいのにと思ったことは何度もある。
これは抱くべき感情ではないと、今日もまた、咲は首を振る。
走ればこんなに近い。なんなら同じ屋根の下にいる。
しかし、求めれば求めるほど、遠くなっていく。おかしな話だ。
咲は今日もまた、感情を押し込んだ。
まだたかしに恋人ができないうちは安心だ。
彼に恋人ができる前に、この感情がどうにかならないものか。
まあ、そうなった時に考えれば良いことよ。
そんなことを考えながら、二人は今日も帰路に着く。
【Love. you】
俺は本が大好きだ。
本があれば、長時間でも短時間でも暇潰しが
できるから。
それに本が有れば、経験したことがなくても、感じることだけはできる。
だから俺は本が大好きだ。 Syuka
【Love you】
私には、愛を伝えたいほど好きになった相手がいない。
学生時代も、社会人になってからも、
いつでも彼氏はいたけど…。
なんなら相手の方も、
私の事を本気で好きになってくれた人は
1人もいなかったんじゃないかなって思う。
漫画に出てくるような、
何度も何度も諦めずに告白してくれるような人も、
別れたくないとゴネてくれる人も、
誰もいなかった。
お互いに好きなフリをし合っている
人間同士、結婚し…
今更だけど、後悔してる。
一度ぐらい本気の恋愛を経験しておけばよかったよね。
まだ間に合う人は頑張るんだよ。
みんな、明日も安心安全でね。
良き三連休を。
親愛なる私へ。最後のダンスは君と踊りたい。上手く踊れなくても気にしなくていいよ。私たちは、今ではお互いのことをとてもよく知っているから。
君と最後に抱き合って踊る時には、人生が有意義だったと感じられるといいな。
ただし、それは単なる陶酔ではなく、本当のダンスだ。人生には必ず意味があるから、一つの人生を2人で分かち合ってダンスがしたいんだ。
そのときには、安らぎ、心地よさ、誠実さ、奮闘の結果を一緒に喜び、分かち合いたい。
一つ覚えてほしい。君のことを真に理解し、いつまでも忘れない誰かがいるとすれば、それは私だ。それは私自身のことなんだよ。
Love you
今まで、I Love youなんて言ってもらえることはなかったかなぁ。
多分これからもないかも、日本人だし。
でも、I Love youを言う機会はあるかもしれない。
死ぬときまでその可能性はゼロじゃない。
だって私しだいだから。
#178
Love you
From my bottle of heart.
昨日は雨だった。
今日も一日中、雨なのかなぁ?
あぁ!嫌だ嫌だ!
横丁の隅で、いつも泣いていた
あの子猫、まだ元気かな?
昔、付き合っていた女に、そっくりでね?
オレに餌をねだるくせに
まったく甘えてこない。
そんな気まぐれな女だった
....オレ、もう病院から出れないんだってさ
笑えるだろwww
"帰って来たら付き合ってくれますか"
もう何年も前に貴方から言われた言葉。
そんな昔の口約束を私は未だに忘れられずにいる。
いつかふらっと目の前に現れるかもしれないと
0に近い可能性を期待してしまうのだ。
もう諦めた方が良いのはよく分かっている。
でも私の心は簡単に諦めさせてくれないのだ。
未だに待っている私はきっと馬鹿なのでしょう。
それでも私はまだ貴方を愛しているのです。
ーLove youー
私には超能力がある。
といっても便利なものではなく、他人が誰に恋しているかがわかる程度。
頭の上に『LOVE ○○』と出て、○○の所にその人が好きな人の名前が入る。
誰にも恋していなければ何も出てこない。
と言っても年頃の男女に色恋は付きものなので、ほとんどの人間の上に文字が出ているのだけれど。
ただこの能力、はっきり言って役に立たないどころか、邪魔ですらある。
例えばカップルなのにお互い好きな人が違うとか、例えば突然好きな人が変わったとか、そう言うのを見るとダメだと思っても邪推してしまう。
しかも『他人の好きな人が分かる』なんて信じてもらえないから、誰にも相談することは出来な――
いや、一人だけこの事を知っている人間がいる。
「先輩、こんにちは」
放課後、下駄箱で靴を履き替えていると、後輩の男子から声をかけられる。
「先輩は今日も綺麗ですね」
「あら、ありがとう」
何を隠そう、後輩は私の恋人だ。
そして私の能力を知っている一人である。
なぜ私の能力を知っているのかと言うと、彼の頭の上にある『Love you』の文字が関係している。
普通Loveの後ろには人名が入るのだが、なぜか彼だけ英語なのである。
姿を見かけるたびに、どんどん疑問が膨れ上がっていく。
どうしても我慢できなくなり、最終的に彼を捕まえて、思い切って聞いてみたのだ。
その時に私の能力のことを話したのだが、もちろん最初は信じていなかった。
だけど少し考えた後、何かに納得して私の能力のことを信じてくれたのだ。
そこで『誰が好きなのか?』と聞いたところ、『あなたの事が好きなんです』と言わた。
『youとはあなたのことです』とも。
突然の事にパニックになりその場では保留にしたのだが、日を追うごとに彼のことを意識し始め、ついに付き合うことになった。
それまで彼のことを全く意識していなかったのだが、告白されたら好きになるんだから、私も現金なものである。
だが謎は残ったままだ。
なぜLoveの後ろに私の名前が入らず、『you』となっているのか?
付き合い始めてから数日掛けて考え、私はある仮説を立てた。
せっかくここに後輩がいるので、仮説を証明したいと思う。
「ねえねえ、ずっと気になってたことがあるんだけど、聞いていいかな」
「なんですか?先輩」
「君、私の名前、知ってるよね」
そう言うと後輩の顔が真っ青になる。
ワオ、マジでか。
本当に私の名前を知らないらしい。
分からないから『you』か。
なるほどね。
「あの、ゴメンなさい」
彼は怯えるような顔をするが、その反応に私の嗜虐心を刺激され、ちょっとだけ意地悪してみる。
実はちゃんと名乗ってない私にも責任はあるのだが、それは棚に上げる。
「どうしようかな~。ショックだな~」
棒読み気味だったが、彼の様子は変わらなかった。
「あの、何でもしますから」
「へえ、何でもねえ」
焦っちゃって可愛いね。
でもいじめ過ぎて嫌われてしまうのも大変なので、ここまでにしておく。
頭の上の文字が変わったら、多分私は立ち直れん。
「フフフ、今回だけ特別にデザート奢ってくれたら許してあげる。
学校の近くのレストランで、おいしそうなパフェがあるのよ」
「うっ、分かりました」
私が提案すると、彼はほっと胸を撫でおろした。
「私の名前は、中村 静香よ」
そう言うと、彼の頭の上の文字が『Love you』から『Love 静香』に変わる。
私はそれを見て、大きく頷く。
余は満足じゃ。
「じゃあ、静香先輩行きましょう」
そういって彼は私の手を取る。
初めての名前呼びに少しむずがゆくなるけど、それ以上に嬉しくなる
やっぱり恋人からは名前で呼んでもらわないとね。
「死人みたいな顔をしているね」
先生は言った。
「可哀想に、私が守ってやろうな」
肩に、先生は手を乗せてそのまま抱き寄せた。
僕の髪を撫でる手つきはとてもやさしい。
それに安心するほど心は開いちゃいないが。
触れられるのくらい、撫でられるのくらいどうってことない。
そんなもの今更さ。
「先生は、僕に笑ってて欲しいの」
疑問符なんかつけない。
返ってくる答えはいつも同じだ。つけるだけ無駄さ。
「そうとも、違うとも言えないな。
私はただ、笑っているのが君の本心ならば、そうして欲しい」
「あるがままの君でいることが出来るなら、それ以上のことは無いだろう」
今日は口数が多い。珍しい日もあるもんだ。
「……そう。じゃあ先生、何も言わずにこれを貰って」
「ああ。君から貰えるものはなんでもうれしいよ、ありがとう」
先生の顔を引き寄せて口を開けさせ、錠剤をふたつ、先生の口の中へと放り込む。
何度目だろうか。ため息が出そうなほどこれを繰り返している。
もっとも、ため息などお互いの息遣いに上書きされて、つく暇もないが。
飲み込んだのを確認するように舌を動かし、最後に口付けを落とす。
「ほらせんせ、もう寝よう」
「うん、そうだね。君のことは私が守るから、ほら、ここへ来て、一緒に寝よう」
薬瓶の錠剤はそろそろ尽きそう。
ならもう、眠るべきだ。
明日はとびきり楽しく安らかに過ごそうね、先生。
もっと、一緒にいられたらいいけどね。
一言囁いて、僕は先生に大人しく抱きしめられつつ、明日に思いを馳せた。
「Love you」2024/02/24