『通り雨』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「通り雨」
いつまでも残暑が厳しくて、暑さにだれている。
空気も何だかねっとりしていて、とにかく暑い。
昔は結構夕立があって、一雨来ると少し気温も下がって過ごし易くなってたけど、そういえば最近夕立ってあんまりないよね?
日本には四季があって、四季折々の風物詩があって。それで風情があった。侘び寂びも感じられた。
でも、最近は雨が降れば集中豪雨だし、風が吹けば台風か竜巻だし。災害も増えた気がする。
何だか丁度いい感じが少なくなってきた。
四季自体も何だか怪しくなってきて、今の日本はニ季だって言う人もいる。そもそも温帯地方じゃなくて、気候的には亜熱帯だって言われてるし。
何か、風物詩的にも環境的にも危ない気がする。
地球も大変だし、人も通り雨とかを楽しむ心の余裕がなくなってきた気がする。
何だか、寂しいね······
通り雨わざと濡れて君の視線を奪いたかっただけ___
通り雨
外を歩いていると、雨が降ってきた。
天気予報では晴れだった為、傘は持っていない。
急いで近場の飲食店に入った。
街中だった事が不幸中の幸いだろう。
席について気づいた。
金があまり無い。
幸い空いているファミレスだ。
飲み物だけでしばらく居座らせてもらおう。
運がいいのか悪いのか、よく分からない日になった。
『通り雨』
たった2分の通り雨。
それだけでも、すべてをもっていくにはじゅうぶんだ。
今日のために買ったブラウス。
黒のハイヒール。
ゆるく巻いてアップにした髪。
春に合わせた淡いメイク。
ぜんぶ崩れた。
濡れて、泥がはねて、巻きは取れて、顔もぐちゃぐちゃ。
沖縄の雨は突然なもので、激しく降ったかと思ったら、数分後には、雨上がりの輝かしい空が広がっている。
まるで、この綺麗な虹のためにさっきの雨は降ったんだというように……嘘のようによく晴れる。
その雨で崩れてしまったものに、空は寄り添ってくれない。
久しぶりに、1人で気兼ねなく出かけられると思っていたのに。
もういいや。
…………………………………………帰ろう。
通り雨
雨が通るだけなら
全ての雨が通り雨になる
短時間に過ぎていく雨が通り雨
長くて1時間くらい?
お天気アプリがあるから
どれくらい続くのか大体は判るよ
手元にスマホがあるだろうし
スマホで遊んでたら割と直ぐかもね
雨が急いでるので
こちらはゆっくりしましょう
時間に左右されるなら
ひとまず人が相手なら連絡しましょう
雨宿り
濡れた髪
濡れた服に透ける肌
こんなに間近で
見つめていられる
吐息の熱で乾かないよう
息をひそめて
──── やむなよ、雨
【通り雨】
──この感情も、きっと通り雨のようなものだから。
書き溜め失礼します。土日に一本くらいは上げられると思います。
(通り雨)
急な大雨に笑いながら玄関に飛び込めるふたりでありたい。
【通り雨】
通り雨は厄介なヤツ。あれ、天気予報じゃ晴れの予報だったのに。天気予報が通じないなんて、もう無敵じゃん。なんだろう、明智光秀みたいな(?)。
通り雨は傘を使えないのだ。魔法も効かない、打撃攻撃も効かない。ラスボスだ。どうだろう、通り雨=ラスボスなんて、考えたことあるだろうか。多分、99.99%の人が考えたことがないと思う。……てことは、僕は0.01%に入った訳だ。ううん、名誉なんだか、不名誉なんだか。
ただ、僕はそのラスボスとやらに遭遇したことがない。これを読んでいる人の中にラスボスにやられた人(通り雨でずぶ濡れた人のこと)も、ラスボスを討伐した人(通り雨を見事傘で防いだ人)もいるだろう。
ただ、勇者たる者、最悪の想定は常にしておくべきだ(さっきからなんの話でしょう)。
雨が降り
どうかこんな私と
憎い恋心を洗い流してくださいと
願うばかり
どうかどうか
私の叶わぬ恋心を洗い流してください
『通り雨』に願いを
通り雨だ
すぐ止むといいなぁ
慌てて折り畳み傘を取り出したけれど
君は「すぐ止むよ」って笑っていた
だから私も「そうだね」って返して
少し濡れた
雨さえも君の隣にいれば笑える
偏頭痛は酷いけれど君が笑うならいいと思った
通り雨
あなたと一緒に初めて街へと出掛けた
世間ではこれをデートというものみたいだけど、私にとってはあなたと出掛けられるというだけで嬉しい
帰りの途中、通り雨に遭遇したけれどあなたと一緒にいられるのだから全然嫌ではない
むかしね
電車に乗ってて
通り雨と競争して
負けたことがあるよ
降りる駅につく頃には
もっと先へ行ってしまって
空は晴れていたよ
………通り雨
通り雨の後に虹が出た
田んぼを車で走っていたので
綺麗なアーチになっていた
いくつになっても
雨の後に日が差したら
虹を探してしまう
『通り雨』
君と一緒なら、通り雨に濡れるのだって悪くないかな。
雨足が近づいて私の後ろを通る。
ふと振り返ると、彼は私に虹を手渡す。
「通り雨」とかけまして
「濡れた切手」と解きます。
その心はすぐに「晴れる/貼れる」でしょう。
通り雨に濡れる
傘を忘れて濡れる
寂しい心も濡れる
通り雨
黄昏時、ビルの谷間の寂しい路地だ。私は退勤して家路を急いでいた。
通行人とすれ違いざま「来るぞ」と聞こえた。
私に言ったのだろうか?
振り向くと紋付羽織袴、そして丁髷。整った身なりの江戸時代の侍と目が合った。
あれ?と思った瞬間ふっとあたりが暗くなり、遠くから聞こえてきたと思った悲鳴が気づくとすぐそばから発せられている。降りかかった生温かい液体を拭って手を見ると血液だった。
斬られて路上に落ち燃え上がる提灯が、地面を転げ回って苦痛の声をあげる和服の男を照らし出している。
さっきの紋付侍は現代の景色と共に消え、かわりに私が江戸時代に来てしまったようだ。
長い板塀と水路に挟まれた舗装されていない小路で、男を斬ったと思しき殺気立った賊がこちらに刀を向けている。来るのか、と思ったら斬られた方の仲間らしい若い侍が抜刀して前に出た。
しばし対峙し、動いた途端気合いの声と共に何かの塊が吹っ飛んで路上に落ちた。指がついている。これは手首だ。
実際にそれが武器として使われる現場に立つと刀はこんなに恐ろしく見えるものか。
劣勢となった賊は逃げるか迷ったように見えたが、突然私に凄まじい殺意を向け、駆け寄って刀を振りかぶった。叫んだ声は天誅、と聞こえた。
これは過去の出来事で、実際に私の位置にいたのは紋付袴の侍だったのではないか。彼はここで殺されたのか。私には天誅される覚えはないぞ。
ゆっくりと感じられる時間の中でこんなことを思っていた気がする。
私は反射的にノートパソコンが入った鞄を盾にして刀を受け、横に薙ぎ払った。
体勢を崩した賊の背を若い侍が袈裟斬りにした。
ざあっと血が飛んで雨のようにあたりに降り注いだ。
顔についた血を拭って手を見ると、何もついていない。
気がつくと私は元のビルの谷間にいた。
この時は気づかなかったが、道の端には小さな石碑があり、何人もを殺した幕末の暗殺者がついに返り討ちにされて命を落とした現場がここであることを伝えていた。
目的を遂げられなかった暗殺者の怨念が今でも標的の子孫を狙って暗殺の場面を再現しており、最初に現れた紋付袴の侍はご先祖様で私を助けようとしたのではないか、今はそう考えている。
煉瓦造りの街路を歩いていると、ふと鼻先にしずくが落ちてきた。立ち止まって、空を仰いだステラの顔に、ぱたぱたとしずくが続けざまに落ちてくる。
ついさっきまで青空が広がっていたはずなのに、今は暑い雲が垂れ込めている。向こうの方にはまだ青空が見えた。
「――通り雨かもしれませんね」
声が降ってくると同時に頭に何かを被せられた。視界が極端に狭まる。ふんわりと漂う香りと、この硬質な肌触りは、彼が着ていたジャケットだ。
「ラインハルト、こんなことしなくていいのよ」ステラは頭を隣にいる彼の方へと向ける。「あなたのジャケットが濡れてしまうじゃない」
ふふと小さく笑う声がする。生憎と、視界が狭いせいで彼の表情はよく見えないが、いつものように穏やかな微笑みを浮かべているのだろう。そんな笑い声だ。
「上着は濡れても乾かせばいいんです」
「わたしだって濡れても、いつか乾くわよ」
「体を濡れたままにしていては、風邪を引いてしまいます」
「少々濡れたくらいで風邪など引かないわよ」
間髪容れずに返ってくる言葉に、ステラは呆れを混えて返答する。全く、この男はいつまで経っても過保護だ。出会ったときから何も変わっていない。
(――まあ、だから安心できるのだけど)
小さく息をつくとステラは微笑を口元に浮かべる。
被せられていたジャケットを羽織り直すと、彼を見上げた。彼は穏やかな微笑みを彼女に返して小首を傾げた。
「わたしだって、あなたが濡れるのが嫌なのよ」
ステラがそう言うと、彼は少し目を見開いたが、すぐに笑顔に戻った。
「だから、面白いものを見せてあげる」
彼女は指を鳴らした。ぱちんと小気味のいい音がしめやかに辺りに響く。すると、しとしとと自分たちを濡らしていたしずくが自分たちを避けていくようになった。
今度こそ完全に目を見開いて、ラインハルトはその光景を見つめている。
「もっと早くこうすればよかったわね。ごめんなさい」
「いえ……これは、一体?」
「単純なことよ」彼女は肩を竦めた。「魔術で雨を弾いているの」
彼は感嘆の溜息を洩らすと、ステラの方に顔を向けた。
「さすがですね、ステラ。式も詠唱もなしに行使するとは」
「こんなこと大したことないわ」
そう言った彼女は、自分たちの周りに虹ができていることに気づいて声を上げた。
「見て、ラインハルト。虹が出てるわ」
「おや、本当ですね」
自分たちを彩る虹を見て、彼は再び穏やかな笑みを浮かべた。彼女の肩を抱き寄せると、彼女はきょとんとしたように彼を見上げたが、ふっと笑顔になると彼に寄り添った。
やがて、通り雨は去っていくだろう。それまではこの美しい景色をあなたと見ていたい。