『裏返し』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
裏返し
(本稿を下書きとして保管)
2024.8.22 藍
洋服の裾の綻び
裁縫箱を出して
針に糸を通して
ちくちくと縫う
苦手だけど縫う
縫目は美しくね
表に出ないよう
祖母の針仕事は
優しくて丁寧で
しつけ糸の白の
大きな三つ編み
するりと一本を
取り出していた
私もやりたくて
何度も絡まった
子供だからかな
大人になった今
苦手だけど縫う
祖母の大きな手
偉大な魔法使い
『裏返し』
ずっとわからなかったの。
どうして私にあんなひどい事ばかり言うのか。
「他に好きな人がいる」とか
「これからも友達として付き合っていきたい」とか
やっとわかった。愛情の裏返しなんだって。
私が悲しむような事を言って反応を見ていたんだって。
友達でもいいからこれからも一緒にいて欲しいなんて嬉しい。
私頑張るね。
あなたの一番になれるように。
〈 裏返し 〉
ウラのウラはオモテ
裏返しの感情は、常に表裏一体で存在する。
それは相手ですら同じこと
何気ない言葉が裏返しで伝わることもある。
だから一回立ち止まって、考えよう
その言葉が、誰かを傷つけていないのかを。
私はね天邪鬼なんだ
好きな子はいじめちゃうってあるでしょ?
あれほんとにあるんだよね
私の場合は気のないフリをするんだけどね
本当はもっと近くにいたい
近くにいて沢山お話したい
お話してもっと私を見てほしい
そう思っているのに
目が合いそうになると逸らしちゃうし
近くに来てくれたのに距離を置いてしまう
恥ずかしいのもあるんだけど
ついキツい言い方とかになっちゃうのよね
素直になれない私は本当に嫌い
もっと素直になりたいな
「裏返し」
どこかの階のどこかの人
たまたま帰路のエレベーターで
同じタイミングで乗り合わせた
ふと襟元を見ると
Tシャツが裏返し
あっ❕と思った
しかしここで教えたからといって
どうしようもない
もうすぐ各々の家だし
黙ってスルーした
✴️127✴️裏返し
私は悩んでいる。さよならを言う前に、あの人にどう、この事態を伝えるべきか。鳥のようにさりげなく、つつくように、服が裏返しです。と伝えるだけでいいのだが、如何せん、あの人の話が終わらないのである。
裏返し。
小学生の時、オトンの大人の本を盗み見していたのがバレて、焦って裏返しにした。
中学生の時、テストの点数が思ったより悪くて、もらってすぐに、裏返しにした。
高校の時、ポケベルに彼女から「別れたい」とメッセージが届き、ショックで裏返しにした。
大学の時、第1志望の会社から不採用通知が届き、読んだ後すぐに裏返しにした。
大人になってからは、うっかり詐欺サイトを開いてしまい、恐怖心からスマホを裏返しにした。
裏返しにしても、何も変わらないことは知っている。
現実逃避をしていることも、自分でわかっている。
しかし、向き合うのが辛い時もある。心が追いつかない時がある。
だから今日も、給料明細を見た瞬間に裏返しして、現実から目を背けてしまうんだよなー
愛情の裏返し
なんてものは
基本相手には通じない
裏返す必要なんて無いものを
自分が照れ臭いからとか
かっこつかないから
真っ直ぐ伝えられない
それなら相手にどう思われてもしょうがない
そんなつもりでは全くなかった
それがなに?
服だって裏返しで着てたら恥ずかしい
裏返しってそう言うこと
私の気持ち
裏返し
本当の私は
裏の裏かもしれないな
裏返し
最近同棲を始めた
今まで家での様子とか知らなかったから怒ろうにも怒れない
何に怒れないか、
それは、とてもだらしなく、すぐキレてしまうところだ
この前も、仕事がうまく行かなかったからと言って
暴言を吐かれたり、殴られたりした
逃げようともしたけど
逃げたらもっとやられると思って逃げれない
でも、キレられた後はすごく謝ってくれるし、
なんなら、いつもより甘えたり、大切にしてくれる
それが嬉しいからどんなことされても逃げたくない
これが裏返しになればいいのに
人の心は裏返し
強がってる人は本当は弱くて
弱いと思ってるけど本当は強かったりする
良し悪しも同じで
良かれが本当は悪いことであったり
悪いことと思えば良いことであったり
世界って裏返しが多い。
主張
自分の性についてちゃんと考えたことありますか?
近年、「多様性」として身体の性より内面の性を尊重するべきと言う主張をよく聞きます。
記憶に新しいものでパリオリンピックでの開会式や女子選手としての区別での論争がありましたし、国内でも男女兼用トイレであったり男女別校など様々なところで話題になっています。
私は身体的性別での区別が必要だと思います。
内面性はもちろん尊重されるべきとも思いますが、それよりも身体的性別での区別のほうが前提であると考えます。
右利きの人が多いから駅の自動改札や文房具もそれに合わせて作られているように、国産車は右側に運転席があり駐車券を取る時も右側に設置されているところが多いように、男女別の公衆浴場やトイレや学校は今まで通り必要です。
現在も存在する混浴温泉や誰でもトイレや共学を利用すれば問題ないと思いますし、その数が足りないのであれば増設したり工夫する事が出来るのではないでしょうか。
「多様性」を尊重しすぎてその他の大勢の生活を無理やり変えたり、権利が狭められる事の方が問題だと思っているのです。
私は性差別をするつもりなんて全くなく、むしろ「みんな違ってみんないい」と思うのですが、個人の意見を他人に強要することが一番間違っていると強く主張したいのです。
ここまで述べてきた内容も、もちろん強要するつもりはないですが、もし私の権利が失われたり狭められていくのなら争うつもりでいます。
黒白つけられない部分が増えるのなら灰色のカテゴリを作れば良いだろうと考える人が増え、それぞれを認め合えることこそが「多様性」ではないでしょうか。
それが私の主張です。
私は、本が大好きで、いつもない朝本を読んでいた。だがある日のこと、本が裏返しになっていて、妹がいたずらをしてしまったらしい。
野郎の厳しさは優しさでもなんでもない
ただの自己満だ
【裏返し】
デスクの上に家族の写真を飾っている。
愛妻家、子煩悩などとからかわれながら。
汚い仕事をするとき、私は写真を裏返しにする。
データを改竄し、善良な人たちを地獄に落とすときの自分を、家族に見られたくない。
写真のなかの妻や子どもたちの視線を一時的にかわしたところで、私のやっていることは変わらない。
何食わぬ顔で裏返しにした写真をもとに戻せば、やさしい妻の瞳と子どもたちの弾ける笑顔が目に飛び込んでくる。
私は立派な仕事をしている。
『愛の反対は憎悪ではない、無関心である』
これはかの有名なマザーテレサの言葉だ。A子はパタンと本を閉じる。毎日少しずつ、何かが削がれていっていると思っていたこの感覚に、まるでマザーから言葉を付けてもらえたような気がした。
その間もB男はスマホから顔を上げず、親指で画面をスライドさせるのに今日も夢中になっている。
慈愛に満ちた彼女の格言が、じんわりと確実にA子の中で波紋を広げていく。何かがすぅっと冷えていくのを感じた。
「……もうここに愛は無いの」
B男がこれを聞いているのかどうかなんて、最早そんなことはどうでも良かった。これからやるべきことに一筋の光が射す。
A子はダンボールを購入しに行くべく、その場でゆっくりと立ち上がった。
短所は長所の裏返し
どこから見るかで印象が変わる
近くで見るか遠くで見るかで
違うものに見えたりもする
見ようと思えば
なんだってどんなふうにも見えるなんて
目もくれずに通り過ぎてきた風景が
なんだかもったいなく思えてきた
裏返して考えてみて
言葉の意味
行動の意味
わかる?
わからなくていいよ
君を通して自分をみて
自虐して笑っているの
→短編・ぐるりさん
多くの人が行き交う往来で、名前を呼ばれた私は振り返った。
柔和な雰囲気の女性が朗らかな笑顔を浮かべている。
「急に引っ越しちゃったよね? 小学5年のときクラスメイトだったんだけど、覚えてないかな?」
そう言って名乗った彼女は、あまりにも私の知る彼女の印象からかけ離れていた。
私が訝しげな表情をしていたのだろう。彼女は秘密の暗号を口にするように声を落とした。
「ぐるりさん、知ってるよね?」
私は思わず息を止めた。背中がヒュッと凍った。
ぐるりさんは当時の小学生のあいだで流行ったおまじないだ。人格を変えてしまうおまじない。
やり方は簡単で、対象人物の名前を薄紙に書いて水に濡らし、校庭の隅にある踊る少女像の台座にこれを貼る。このとき名前を書いた面と台座を合わせること。そうすると、濡れた薄紙越しに名前が反転して浮き上がる。
夜中に少女像はぐるりさんとなって、名前の主を人格を裏返してしまう、というものだ。
良い人は悪い人に、その反対も然り。中学校の男子生徒にこれをやられた人がいて、大人しかった彼は不良グループに入ったという。同様の話は山ほどあったが、どれもこれも噂話止まりだった。怖さ半分興味半分の小学生ゴシップだ。
当時、私のクラスメイトにイジメっ子がいた。彼女の陰湿なイジメは凄まじく、最終的にクラス中から総スカンを食らっていた。
放課後に友人たちと遊んでいたとき、彼女の名前をぐるりさんに貼ってみようという話になった。イジメっ子の反対は優しい子、だからクラスのためにも彼女のためにもなる。この大義名分を言い訳に私たちはおまじないを実行した。
しかし、その結果を私は知らない。
その日の夜遅く、私は母親と逃げるように家を出た。長く続いていた父親の暴力が原因だった。
「誰かが私の名前をぐるりさんに貼ったんだって。信じられないかも知れないけれど、私すっかり変わったの。あなたのこともイジメてしまったよね。本当にごめんなさい」
呼び止めてごめんね、と彼女は申し訳無さそうな顔をした。その性格の良さや今の幸福さ加減がうかがい知れる。
私は曖昧に「そんなこと……」と言葉を濁すのが精一杯だった。彼女の今は良い結果に恵まれているようだが、私の後ろ暗さは晴れない。否、なおさら陰を増す。
あの日、ぐるりさんに彼女を裏返してもらおうと言い出したのは、私だ。
彼女で成功したら、父親の名前を貼るつもりだった。本当に変わるのか、どう変わってしまうのかを確かめたかったのだ。
もしあの日、彼女ではなく父親の名前を書いていたら……。
去りゆく彼女の後ろ姿を、私はぼんやりと見送った。
テーマ; 裏返し