『昨日へのさよなら、明日との出会い』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
幼い頃からずっと応援してくれた優しい祖父。
まだあの部屋に、あの場所に
居るんじゃないかと錯覚する。
時間はどんどん過ぎて、私も景色も変わっていくのに
大切な思い出の場所はあの頃のまま時が止まったように、静かに風が流れるだけ。
たくさんお世話になったし
親よりもたくさん心配してくれて…
不器用なりに愛してくれた。
お葬式で最後に顔を見た時も、遺骨を拾う時も
さよならは言えなかった。
感謝しかなかったから。
何度も「ありがとう」と言った…本当は生きてる内にたくさん言いたかった。
お互い照れ臭くて言えなかったのは心残り。
「今度、結婚することになった。
子供も生まれるんだよ。
お互いの家に挨拶に行く…
明日は自分の家族に。来週は彼の家に。
ちょっと緊張しちゃって、おじいちゃんに会いにきた。」
返事はないけれど、お墓の中の祖父に話しかける。
「私、上手くやれるかな。幸せになれるかな。」
呟くと木々が大きく揺れ、私の髪を乱す。
昔、祖父はいつも誉める代わりに髪をぐしゃぐしゃしたのを思い出す…
未来への不安はたくさんあるけれど
周りの助けを借りながら
自分で自分の未来を拓くんだ。
大丈夫、大丈夫。
お前の思う通りにやってごらん。
祖父がいつもくれた言葉が脳裏によみがえる。
とりあえず
明日をがんばろう。
また今日も日が暮れる。
霞む視界に想いを馳せ、また強く願うのだろう。
昇る星は輝き、
小さな小さな粒であれ、美しかった。
分かりもしない明日には絶望する。
しかし、歩んでいくしかないのだと悟る。
そして、今日も日付を跨いだ。
僕はポエムのように生きていたの?
そうね。
昨日へさようなら…かぁ
ほんとにさよならできるなら
あのことは、さよならしてしまいたい。
あの5年の出来事をサヨナラ…って
消しゴムで消してしまいたい。