幼い頃からずっと応援してくれた優しい祖父。
まだあの部屋に、あの場所に
居るんじゃないかと錯覚する。
時間はどんどん過ぎて、私も景色も変わっていくのに
大切な思い出の場所はあの頃のまま時が止まったように、静かに風が流れるだけ。
たくさんお世話になったし
親よりもたくさん心配してくれて…
不器用なりに愛してくれた。
お葬式で最後に顔を見た時も、遺骨を拾う時も
さよならは言えなかった。
感謝しかなかったから。
何度も「ありがとう」と言った…本当は生きてる内にたくさん言いたかった。
お互い照れ臭くて言えなかったのは心残り。
「今度、結婚することになった。
子供も生まれるんだよ。
お互いの家に挨拶に行く…
明日は自分の家族に。来週は彼の家に。
ちょっと緊張しちゃって、おじいちゃんに会いにきた。」
返事はないけれど、お墓の中の祖父に話しかける。
「私、上手くやれるかな。幸せになれるかな。」
呟くと木々が大きく揺れ、私の髪を乱す。
昔、祖父はいつも誉める代わりに髪をぐしゃぐしゃしたのを思い出す…
未来への不安はたくさんあるけれど
周りの助けを借りながら
自分で自分の未来を拓くんだ。
大丈夫、大丈夫。
お前の思う通りにやってごらん。
祖父がいつもくれた言葉が脳裏によみがえる。
とりあえず
明日をがんばろう。
5/22/2021, 1:13:48 PM