『微熱』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「微熱」
コロナワクチン接種で微熱が出ると途端に気持ちが萎えてしまう。
何でか分からない。けど体調不良や頭痛が熱のせいだと思うとやりたかった予定が出来なくなってそれをすごく後悔してしまう自分がいるから。
次にやれば良いと思えたらいいのに、微熱のせいでそんなポジティブになれないのだ。
頑張ってるのに休めないから、「休んでいいよ」の代名詞がほしかった。「君は病気だね」って。そしたら、ほら、副音声。『落ち着くまで少し休もうか』。ふふ、ね、聞こえてくるでしょう。ごめんなさい、不謹慎だよね。ほんっとうに、最低なこと。でも、私にとってはとても、甘美な響きなんだよなあ。
働ける歳だけど、働かない。赤点ばっかとるから働けない。
勉強しなきゃいけないけど、勉強はやっぱり身が入らない。
健康じゃないけど、病気でもない。
こころがいたいのにびょーきになれない。
それは所謂健常者。
つまるところはなにも背負ってないってことだから、冗談でも休むなんて言っちゃいけない。
やすめない。だって今休めば怠けてるだけ。
やってるのは無駄な呼吸だけ、金食い虫だけ 。
…からだは辛いんだけどなあ、やっぱり、もっと頑張らないといけないのかなあ。
__破れた服を縫って、父の帰りを待ってたんです。
勝手に服を買ってプレゼントしたら怒られるから、せめて今ある服の手入れをしてあげたいと思って。父は、たった一人の私の「かぞく」なんです。私はそう思ったことないけど、父は「かぞく」ってこだわります。あのひと、自分からわざわざ人が離れるようなことをするのに、馬鹿ですよね。でも、私は逃げ損なった。だから、娘になった。それで、娘ってたぶん、こういう健気なことをするんですよ、たぶん。だから、喜んでくれるかなあって。私だって「かぞく」って憧れるし、たった一人の肉親だから、機嫌がいいときの父は、どうも、やっぱり嫌いになりきれないんですよ。だから服を縫いました。あわよくば、これに気づいた日は機嫌がよくなればいいなって。あわよくば、これに気づかれた日は私も普通の人間になって過ごせるといいなって。これを発端とした何か…具体的には何かわかんないけど、普通の家族にも起こり得る何か…が、起きたら、「かぞく」を知ってるって、優越感に浸れるかもしれないと思ったんです。
父の帰りを待ちました。そういや、父はもう一ヶ月休みをとっていません。学歴がなくて、組織に就くと、必然的に高卒だとか大卒だとか、"親のお陰で努力できる環境にいた人"と比べると、酷い労働環境で働かされるんだとか言ってました。私はもう16です。働ける歳です。だけど学歴のために、若さと時間を浪費して、中身も理解できない授業を聞き流すために学校に通っています。ありがたいことに、父がそうさせてくれたんです。学歴がないと、女は何も出来ないらしいですよ、社会って言うのは、大人って言うのは、全く怖いものですね。私は学歴のために今は働けないので、働いている父の所有物として、養われている身として、ありがたくそれらしい態度で成人までの時間を潰させてもらいます。あまり勉強へはのめり込まないように。あまり学生になりきらないように。あくまでも学歴のため。どうせ大学にはいけないんだから、父を、家事を優先して生活をしています。勉強についていくために勉強をすると、父は人間とは思えない形相で私をなじりました。何いっちょまえに勉強なんてしてやがる、家事が甘い、掃除が甘い、髪が落ちてる、家でまで俺に仕事させる気か、お前は他のガキとは違えんだ、甘えるんじゃねえ。かつて母を自殺未遂にまで追い込んだ手法です。しかし勉強より家事を優先すると、今度は勉強をしろと父は私に諭しました。何のために学校に通っている、中以上でありなさい。零か一かにしかなれない、私の不器用さを私は恨みました。父の気まぐれさが、私の極端さが、私が普通になることを諦めさせました。クラスメートに不恰好さを笑われながら、父の存在に怯えながら、私は下の上にしがみつき続けています。たとえ理解しきれずとも、知を得ることは大事です。世間の人はそれができるこの状況を、私の境遇を、「優しいお父さんのもとに生まれてよかった」と捉えます。ほんと、この家に生まれてよかったと、私も思います。働かされたらたぶん、私のダメさがまた目立って、父に何をされたかわかりません。はは、父は偉大ですね。そんな偉大な父が、帰って来たときには既にとても不機嫌だったんだから、ふふ、仕事って言うのはやっぱり、こわいなあと、ははは、もう笑うしかないや、はは。父は私が畳んだ服を血走った目で見ると、吐き捨てるように言いました。「クソガキが、まともに家事も出来ねえのか」。
うん、うん。…はい、すみません。畳み方が甘かったですか。はあ、不器用ですみません。無駄な呼吸をしてすみません。生まれてきてすみません。あなたの人生を駄目にしてすみません。……わかっていました。機嫌が悪いときはなにもかも、父の目には羽虫の死骸のように映るんです。「かぞく」がやった「かぞく」になるための「かぞく」の仕事も、それを終わらせた「かぞく」すら。羽虫の死骸です、死んだ虫です。自分のテリトリー、綺麗な我が家におちていたら、余すこと無く腹立たしいゴミ同然のそれが、一五○センチもの大きさをともなって目の前をちらつくっていうんだから、うん。怒って当然のはずですよね、あなたも怒りますよね。そんなことをされたら、例外なく全人類……私すらも、いらいらしてくるはず。たぶん、きっと、メイビー。捨てられた私と服は、そっと別室に避難しました。
驚きです。どうやら、私の本心は、父に喜んでほしかったようなんですよ。父を思って縫って畳んだ服を受け取ってもらえなかったこと、無下にされたこと、少し残念に思った私がいました。どうせ父のことだから、機嫌がよくても「きたねえな」、ぐらいは言ってくるだろうと、もともと覚悟はしていました。いや、"する"ような仰々しい覚悟なんてのはなくて、日常の一部として何気なく思っただけのような、どちらかと言うと予測に近い覚悟でした。だけど実際、あの今にも殴りかかってきそうな顔を見ると、あぁ、あの人を普通の人には戻せなかったな、と、すこし悲しくなりました。私にとって優しい感情を少しでも持ってくれていたら、不機嫌に埋もれてしまった優しい部分が、私と関わることで引っ張られてまた戻ってくるかもしれなかった。浅ましくも、そう自惚れていました。でも、結果は惨敗だった。たぶん、私は唯一父にとって血が繋がっている人間だから、他の人間より「かぞく」に近くて、家族ごっこに都合がいいと、父は考えたんでしょう。それでなるほど、嘗て私のことを、「かぞく」と呼んだんだろうなと思い至りました。ゴミみたいな気分です。羽虫。羽虫の死骸のような気分ですよ。だって、理解が出来たんです。あぁなんだ、「かぞく」に縛られていたのは私の方だったんだ、と。今回、あなたに私が吐き出したかったのは、それだけです。ははは、はは、はははははは。…う、うぅ。ひぃ、いたいよぉ。こころがいたい。うぅ、うごけない。くるしい。いきをすうだけで、むねが、ほねが、はいが、きしんでいたい。いたい、いたい。いたい、『いたい』! こんなんじゃ、勉強なんてとてもじゃないけど、「怠けてんじゃねえよ」。はい、ごめんなさい、頑張ります。
ああ、休む許可がほしくて、あなたに喋りすぎてしまった。
…………………………こころのいたみで、微熱さえ出ればなあ。
《微熱》
少し前は、みんなマスクを着用していなかった
少し前は、アルコール消毒液を頻繁に見かけなかった
少し前は、微熱で外出を躊躇しなかった
少し前を返して
マスクを押し付けないで
消毒液なんてしまって
微熱でいちいち騒がないで
これ以上、不安と抑圧をばら撒かないで
起きた瞬間に分かる
「あっ、これ熱あるわ」
立つと頭の中で振り子のように頭痛がする
こういう時はなんとなく頭を下げると
早く治るような気がする
確実に歩きながらドアを開き
トイレの便器に座ってため息を吐く
(今日は大学行かんでええな、、、)
微熱が出た。
熱さまシートが、染みる。
体がだるく、天井を見つめる。
明るい外を見ながら、昏い過去を覗けば、
眠りにつき、起きる頃には、たくさんの足音が響く家。
恋のほとぼりが冷めるころ
他人に惹かれるようになるころ
"微熱"
微熱はちょこちょこ出るけれど、
何年も高熱は催さないんだよね
寂し。
#微熱
[微熱]
その手が触れた瞬間、脈拍数が上がって、
それは一定以上続いて、
家に帰り着く頃、気づくの。
熱くなっている、この体に。
あぁ、私、
恋をしてしまったんだ。
ピピピ、というアラームを聞き、脇の下から
体温計を取り出すと──37.2℃。
微熱、か……
久々に熱を出した僕には、微熱でもかなりダ
メージをくらったらしい。
…寝るか。
薬も飲まず、頭も冷やさずに布団に潜った僕
のことを、誰かが看病してくれる夢を見た。
起きたときに、虚しさしか残らないと知って
いたのに…
✴ #微熱 No.3
少しだけ だけ 動き だす
こえだけが いろをなす
お題 微熱
ありふれた奇跡を求めて
微熱になったあの夜
体が熱いのに心は冷えていて
こんなに苦しい時は
瞼を閉じてあなたを想う
微熱。
微熱?
この想いは
微熱?
それとも
高熱?
でも
ドキドキするのが
本当に楽しい。
熱はずっと
この現場が
幸せ。
あなたにアテられたの
ほっぺたも
首筋も
心臓の辺りも
なんか、熱い
…微熱…
ほんのり暖かい
貴女の温もり
どうか 私にも分けてください
_end_
頭の中で警鈴が鳴る。
危険だ。それに、許されない。
だが、触れてくる手は驚くほど優しい。
満足そうに目を細め、いつもより熱を帯びたそれに、私だけが映る。
好きだ、とか愛してるだとか 甘い言葉なんて一つも口にしないけれど
ただ一言
耳元に熱い吐息と共に、低く囁くような声で
「俺の物になれ」と言われれば
全身に身体を溶かしてしまうほどの熱が走り、私の脳は簡単に爆ぜる。
最早、頭は何も機能せず、朦朧としたまま小さく頷けば
ついばむように優しく繰り返される口づけ
月の光が眩しい夜
私達は、微熱を分け合い暖めあった。
「微熱」
人肌恋しい
季節ですね
微熱はよく出る。
今このご時世だから、塾とか行かない方がいいかなって思ってオンラインが増える。部屋狭いからねぇ。万が一の事を考えて…ね。
『微熱』
微熱のときに“会いたい”
と思う人
それは、私の大切な人です。
僅かに熱を帯びた身体はどこか心地良い。
僕を拒絶するかのように冷えきっていた指先ですら少しずつ解れていくのだ。
君のことを考えた。
少し身体が熱くなった気がする。
何故だろうか…?