『向かい合わせ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
これ以上、顔を上げることができなかった。
手元の、やたら背の高い洒落たグラスの中で、氷がからり、となった。
テーブルを挟んで向かい合わせに座った、あの人の顔を見ることはどうしてもできなかった。
「どうしたんだい?下ばかり見て」
いつものように世間話をするような、軽い声で、あの人は僕にそういった。
笑いさえ混じるような口ぶりで。
汗が頰を伝って落ちた。
今日は真夏のはずなのに、店内のクーラーがやけに肌寒く感じる。
「ねえ、どうしたんだい?」
あの人はいたぶるように続けた。
僕は顔を上げられなかった。
ずっとあの人のネクタイの結び目を見つめていた。
汗が滝のように、顔の輪郭を伝って滴り落ちる。
手汗がひどい。
あの人が軽く息を吸った。
何かを話すつもりだ。
そう思った時、僕の口は勝手に弱々しく言葉を絞り出していた。
「ごめんなさい…」
「なぜ謝るんだい?」
間髪を容れず、あの人は答えた。
芝居がかった疑問系で、弄ぶような口調だった。
直感的に僕は絶望する。
バレてる。僕がしたことは全てあの人にバレているんだ。
肩が震える。
服と肌の隙間を、冷や汗が滑り落ちる。
僕は、路上で生きてきた。
貧乏で貧乏で、教養も人間性も善悪も時間も、お金と食べ物に変えていかないと生きていけなかった僕の両親は、当然、まともな感性など持ち合わせていなかった。
両親の暮らしぶりが悪くなり、僕が大きくなって、同情による金銭的価値を提供できなくなった時、僕は路上に放り出された。
僕は、両親の背から習ったように、人間性を、善悪を、道徳を、実益に変えて、生きてきた。
殺し以外ならなんでもした。
今、向かい合わせに座る、あの人に会うまでは。
あの人は、僕にお金を渡した。
路上で生きてきた僕を、目にするといった。
身請け人として僕の生活を保証するから、その代わり、路上で起きていること、関わったもの全てを私に話せ、とあの人は言った。
全てに飢えていた僕はそれを了承した。
あの人が何をしているか、どんな立場なのかはわからない。
ただ一つ言えるのは、僕が報告したその日から、路上で暮らす過去の僕みたいな人々は少しずつ、少しずつ、減っていった。
あの人は僕に文化的な生活を与えた。
あの人は僕を学校に入れ、教育を施した。
僕は少しずつ、少しずつ、ものを知った。
自分が今までしていたこと、他人の気持ち、全ての人に生活と命があること…
僕は考える力を手に入れた。
僕は生活に意義を見出せるようになった。
あの人は、僕に善悪や道徳心や人間性を買い戻した。
僕は自分の生活について考えるようになった。
自分の人生について、自分の罪について、あの人について。
…僕が今していることについて。
昨日、僕は嘘をついた。
仕方なかった。
仕方なかったんだ!
昨日、路上でぶつかったはずみに僕のハンカチをくすねたあの子は、本当に小さい子だった。
小さくて、まだ幼くて、かわいそうな子だった。
…だから、僕は嘘をついた。
そんな子、いないって。
あの人は、僕の嘘に頷いた。
上手くやれたと思った。救えたと思った。
それが間違いだった。
今日の朝、朝食を取るためについたテーブルで、僕と向かい合わせに座ったあの人は、昨日と同じ柔らかな微笑で、一言、こう言った。
「話がある。外出の準備ができたらついてきなさい」
あの人は気づいたんだ。
僕が嘘をついたことに。あの人を裏切ったことに。
顔を上げられない。
怖い。
恥ずかしい。
無力だ。
仕方ない。
謝らなきゃ。
助けなきゃ。
嫌だ、僕だけでも助かりたい。
いろんな感情が混ざり合う。
昨夜まであんなに、自然と向かい合わせで笑えていたのに。話せていたのに。
…今は怖くて仕方ない。
冷房が寒い。
怖い。
いつもつけているあの人の赤いネクタイの、ネクタイピンが恐ろしく無機質に見える。
怖い。
膝が震える。
拳をキュッと握る。
僕はこれからどうすればいい?何が正解なのだろう。
あの人はあれから、何も言わない。
あの人の視線が突き刺さっている。
何も言わずにじっと僕を見つめている。
どうしよう。
どうしたらいいんだ。
周りのざわめきが、ひどくやかましく、遠く聞こえる。
窓の外の蝉の声が、うるさかった。
『向かい合わせ』
休み時間になっても僕は席を立たず
読書をしているような中学生時代だった。
君はいつも僕の前の席に座ってきては
向かい合わせに語りかけてくれて
2年間ずっと休み時間は同じように過ごした。
3年目も変わらぬ光景なんだと
どこかで思い込んでいた。
この風景が変わることはないと。
そして、君の言葉を信じて
高校生になっても大学生になってもその先も、、
ずっとずっと一緒にいるんだとそう信じていた。
どれだけ待てばまた向かい合わせに
君は語りかけてくれるのだろう。
向かい合わせ
「意外と甘えたがりなんだね」
柔らかい声が心身を解いていく。
照れ隠しだとしても
音もなく後ろから羽交締めにするのは
流石にやめてほしいと
大事なあなたに言われてしまったから
勇気を出して、前から抱きついてみるなど...したのだ
「だめでしたか」
やはり恥ずかしさは消えなくて、あえてぶっきらぼうを演じた。
「いいんだよ」
あなたの返事はいつもシンプルだ。
だからこそ、逃げられない。
あなたの前では、心を隠せない。
こんな優しい人の前でなんて、隠す気にもならない。
晒させてください、これからもずっと。
作品No.147【2024/08/25 テーマ:向かい合わせ】
向かい合わせになれば大体
私が見上げる羽目になる
背が低いのも
大変なのよ
「向かい合わせ」
あなたとの向かい合わせはドキドキするけど
隣にいる方と 心が辛いよ。
好きな人と向かい合わせに座ると死にそうになるくらい可愛いよねぇ…
遠距離をしている私たちにとって、
食を共にすることは何よりも至福の時である。
今日1日のできごと、
最近ハマっていること、
今度行きたいランチスポット、
仕事のあーだこーだ、
向かい合わせになって、
ごくごく普通のごはんを食べる、
この他愛ない時間を大切にしていきたい。
ごはんを食べるという動作は
生きる上で当たり前で、
そして、沢山の時間を有する。
彼と一緒に食べられるごはんは
息絶えるまでどれくらいの時間なのだろう。
1日二食1時間✕365日✕50年?
彼との時間を数値化すると、
毎日をなあなあにしてはいけないなぁと思う。
次の休みは二人で餃子でも作って、
ゆっくり飲みながら食べようかしら。
「 向かい合わせ 」
貴女は、どんな人間とも正面から向き合う方でした。
それが無垢な子どもだろうと、思い悩む青年だろうと、俺のような狼藉者だろうと、貴女はその向かいにそっと腰掛け、その者の心と語り合おうと努力されました。
今の貴女もそうですが、あの当時の貴女と違うのは、今の貴女は誰にでもそうするわけではない、ということです。それは俺たちにとっては、大変にありがたいことです。
何せ、本当に危険な人間というものは、改心する可能性がないのですから。貴女がどれだけ真摯に向き合ったところで、彼らは貴女を搾取するだけでしょう。
ですから、貴女が今人を選んでいらっしゃるのは、とても良いことなのですよ。貴女はそれを「人を選り好みしている」と思い、罪悪感を感じることもおありですが、どうかその自責はなさらないでくださいね。
向かい合わせに座るの良くないって言うよね、斜めがいいんだっけ。ちょっとよくわかんないけど。
ご飯一緒に食べるのって、何気にハードル高いよね。マナーとか、気にしなきゃいけないこと多いし。毎回緊張しちゃう。食べる速度とか、音鳴らさないようにとか、喋るタイミングとか、色々わけわかんなくなるの私だけかなー笑
向かい合わせだと相手の表情見えて逆に緊張するから隣でお互いどっかみながら話すのが私はちょうどいいかな、
あなたとわたし
くらべっこしなくていい
あなたとわたし
つよがらなくていい
あなたとわたし
せのびしなくていい
あなたの
むかいあわせがわたし
いまのままでじゅうぶん
むかいあわせのキモチ
#向かい合わせ
#向かい合わせ
苦手なの
だって可笑しくて笑っちゃうから
何考えてるかが分かっちゃって
つい答え合わせしたくなるから
向かい合わせ
とある三兄弟のお話。
くすり、と口に手を当ててあの人は軽く笑った。自信満々に、そんなことあり得ないとでも言うかのように。それに腹が立って、向かいに居るあの人の足を蹴ったくってやるのだ。
向かい合わせ
僕の正面に座る君
普段は混み合っている通勤通学時間の車内も
この時期は空いていて
毎日見かける君がよく見える
どこの誰かも知らない君
でも僕は君のこと気になっていて
毎日同じ時間同じ車両
君も僕の顔くらい覚えていてくれたらいいな
電車の窓際と窓際
距離は離れていても
向かい合わせの君と僕
君のことを凝視するのが照れくさくて
僕はなかなかスマホから顔を上げられない
君は電車の中で
あんまりスマホを見る方じゃなくて
文庫本を開いているけど
たまに顔を少しだけ上げるの
知ってる
僕のことを見てくれてたらいいな
僕と同じように気にしてくれてたらいいな
そんなことを思うけれど
気恥ずかしくてただ思うだけ
そんな僕達を電車は無常にも
会社の最寄りへ運んでいく
向かい合わせ
あ、ヤベッ。
体育の時間。その日は創作ダンスのテスト。クラス内で各々にチームを組み、皆の前で発表をしていく。
仲の良い五人で組んだ我チームの番。意気揚々とスタンバイした最初の立ち位置の向きを一人間違える。皆が左を向き立つところ、一人右を向く。一対四の並びが出来上がり少しだけ騒つく。
向かい合った四人が笑いを堪える。
いや、雰囲気にのまれるな。定評のある無表情に力を込め、俺間違ってませんけど?感を存分に発揮する。
見事ノーミスで踊りきり高評価を獲得。
「おまッ ふざけんなよ、何でお前の方がいい評価なんだよ」
ツボに入って終始グダグダになってしまった四人。結果、周りは最初の入りも間違っていたのは四人の方だと認識する。
「精神の分厚さが違うんだよ」
「いや、面の皮な」
向かい合わせに座ったのは前に会ったことのある人だった。
夢に見たい人だった。
「向かい合わせ」
手を付けていない課題と向かい合わせ
タイムリミットは日が昇るまで
課題VS自分
課題が勝つか自分が勝つか
「絶対、勝つ!!」
課題と向かい合わせ
課題に手を付ける
向かい合わせ
向かい合わせってなんだか緊張する
だから席も対角線で座ってしまう
人と面と向かって向かい合わせになる時なんて名刺交換か押し相撲の時くらい
その時すら目が合ってるか怪しい
好きな人なら尚更である
向かい合わせ
初めてのデートの日…お昼に入ったカフェで、向かい合って座った…
待ち合わせした公園で、少しだけ向かい合った後は、ずっと並んで歩いていたから…何か、気恥ずかしい様な、ちょっと…
何回目かの恋をして、初めて告白して、想いが通じて…だから、本当は、嬉しくて、抱き締めたい位なのに…改めて、私の向こうにいる、あなた…
テーブルを挟んで、微笑む姿が眩しすぎて、直視出来ない…
向かい合わせ
AM 6時半
気だるさとともに電車へと乗り込む。
眠い目をこすりながら、
いつものように好きなアーティストの曲を
イヤホンで聴いていた。
いつの日か、忘れもしない。
あれは、雨が降っていて、
いつもよりも重いからだでなんとか電車に乗り込んだ日だ。
仕事で失敗して、一日中動き回り、心も体も疲れた次の日だった。
だからだ。
だからこそ。
いつも決まった席に座っている僕。
その目の前に向かい合わせで座ってきた君。
あの時落としたタオルを拾ってくれた君。
あの時からずっと、
君に惚れていたんだなあ。
柔らかな声も、笑うとなくなる細い目も、
綺麗で小さな手も、全て。
向かい合わせ
向かい合わせより、隣り合わせがいい。
向かい合わせで、人と話すると、面と向かうので、目のやり場を考えてしまったりと、何だかそわそわして、キンチョーする。
隣り合わせだと、距離は近いけど、顔を合わすのが、はずかしかったら、顔を反らしてもそんなに違和感ないからいい。