「ススキ」
私はただの根無草。貴方は黄金に輝くススキ。
私は貴方に恋をしていた。
輝く貴方に、恋をしていた。
私は貴方を見つめて、貴方はどこかを見つめて。
私は踏みつけられ、貴方は風にそよいで。
そんな毎日が愛おしかった。
私は花をつけることもない、美しくもない草でしかなかったけれど、貴方は柔らかな穂を、穏やかに揺らしていた。
それはそれは、美しかった。
私は日陰で、貴方は太陽と月に照らされて。
雨に打たれても強く強く生きた。
そんな貴方が愛おしかった。
貴方は美しく愛おしい。
そんな貴方だったから、手折られてしまった。
私は手折られる貴方を見つめることしかできなかった。
貴方は命をなくした芒。私は枯れゆく根無草。
愛する貴方を失い、枯れゆくのを待つ根無草。
もし私が貴方と同じ芒だったら、同じように手折られて、同じように死ぬことができたのかしら。
こんなふうに、凍えて死ぬことも、なかったのかしら。
11/10/2024, 3:14:25 PM