悪役令嬢

Open App

『視線の先には』

「あら、これは何かしら」

倉庫の片付けをしていた悪役令嬢は、
埃にまみれた箱の中から一枚のDVDを見つけた。

黒塗りされたパッケージには
『死霊の盆踊り』と赤い文字で書かれている。

気になった悪役令嬢は
魔術師に相談してみる事にした。

「ふむ、これは興味深い代物ですね。面白そう
じゃありませんか。ぜひ皆で見ましょう!」

魔術師の一声によって、
悪役令嬢の屋敷で鑑賞会が始まった。

カーテンを閉めきった涼しい室内には、
バターの香りが漂うポップコーンとコーラ
ふかふかのクッションとソファが用意され、
オシャレなシアタールームの完成だ。

悪役令嬢、魔術師、執事のセバスチャン、
メイドのベッキーの四人は期待と不安が
入り交じった表情でゴクリと息を飲む。

イービルアイのプロジェクターにより
壁に映像が映し出された。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

(何ですのこれは、クソつまんねーですわ!)

映画の内容は、死霊と名乗る女性たちが
延々と踊り続ける意味不明なものだった。

ちらりと他の者たちの様子を伺う悪役令嬢。

セバスチャンは礼儀正しく座っているものの、
明らかに寝ている。

ベッキーは目を擦りながら睡魔と戦っている。

魔術師は目を爛々と輝かせながら、
映画に魅入っていた。

ようやく映画は終わり、エンドロールに突入。

「私、人生の中でこれほどまでに
くだらないものを見たのは初めてですわ」
どっと疲れた悪役令嬢。

「いやあ、なかなか見応えがありましたね!
特に二番目に登場した女優さんが良かったです」
面白そうに感想を語る魔術師。

「ですね!女優さんたちが皆お綺麗で
ダンスが上手でした!」
頑張って褒めようとするベッキー。

「すみません、途中から寝てました」
ようやく起きたセバスチャン。

こうして映画鑑賞会は幕を閉じた。

「お嬢様!あれを見てください!」
突然、窓の外を指差すベッキー。

視線の先に広がっていた光景────
空には暗雲が立ち込め、なんと地面からは
朽ちた手が飛び出してきたではないか。

「な、な、な、一体全体
どうしたというのですか!」

「もしかするとあのDVDには、死霊を復活
させる呪いがかけられていたのかもしれません」

「なんですって!?」
魔術師の言葉に唖然とする悪役令嬢。

眠りから蘇った死霊たちが、呻き声を
上げながら悪役令嬢の屋敷に近づいてくる。

「主、戦闘準備を!」

悪役令嬢は扇子、セバスチャンはナイフ、
魔術師は杖、ベッキーはフライパンを手に持つ。

こうして死霊たちとの激しい攻防戦が
幕を開けたのである。

果たして彼らは無事に
この危機を乗り越えられるのか?
それとも────。






┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙
🧟‍♂️🧟‍♀️🧟‍♂️🧟‍♀️🧟‍♂️🧟‍♀️🧟‍♂️🧟‍♀️🧟‍♂️🧟‍♀️🧟‍♂️🧟‍♀️🧟‍♂️

🏠👸🏻🐺🧙‍♂️👧⁉️

悪役令嬢の屋敷に死霊の大群が
襲いかかってきた!

腐敗した肉の臭気が風に乗って漂う中、
悪役令嬢たちはすぐさまバリケードを作り
魔術師が魔法の城壁を張り巡らさせる。

「一時的な防壁です。長くは持ちません」

「主、ベッキー。噛み付かれたり、
引っかかれないよう気をつけてください」

「もちのろんですわ!」
「了解です!」

悪役令嬢が扇子を持って舞うと、宙に木の杭が
幾重にも現れ、死霊たちの頭蓋骨を貫く。

「お嬢様、すごいです!」
「奴らには頭への攻撃が有効なようですね」

ベッキーが感嘆の声を上げ、セバスチャンが
鋭い眼光で死霊共を見据えた。

セバスチャンの放ったナイフが空気を
裂いて、次々と死霊の脳天に突き刺さる。

近づいてきた死霊相手には背後に回り込み、
首の骨をこきりと折る。

魔術師が杖を構えて呪文を唱えると、
死霊たちの周りに炎の壁が築き上げられた。

刃と化した火炎が屍たちを焼き尽くす光景は、
まるで地獄の業火のようだ。

「えいやっ!これでもくらえ!」

ベッキーがバリケードのすぐ側まで来ていた
死霊の頭をフライパンの底で力いっぱい叩き潰す。

「くっ、数が多すぎる」

次から次へ湧いてくる死霊たち。
倒しても倒してもキリがない。

「最後の手段ですわ。皆さん、私に続いて
この呪文を唱えてくださいまし」

悪役令嬢が呪文を唱え初め、
他の三人も声を合わせた。

「イワコデジマイワコデジマ、
ホンコワ・ゴジキリ!」

「カイ」「トウ」「ホウ」「ブ」
「ジャッキ・タイサン」
「「「「カーーーーッ!!!!」」」」

しゅわわわわああああ✨️✨️✨️✨️

眩い光が闇を払い、
死霊たちが天へ召されていく。

「死霊たちよ、安らかに眠りなさい」

夜が明け、四人は疲れた表情で朝日を眺めた。

「全く、なんて一日だったのかしら」

「予想外の展開でしたが、結果オーライという
ところでしょうか。皆さんお疲れ様でした」

「ともかく全員無事でよかった」
「ほっとしてまだ手の震えが……」

朝日に照らされた庭で、
淹れたてのコーヒーを飲む四人。
コーヒーの芳醇な香りが彼らを包み込む。

こうして死霊たちとの激しい闘いは
幕を閉じたのであった。

7/19/2024, 8:00:05 PM