彼女がブレザーをまくると、おどろおどろしい傷がみるみる現れた。
ブレザーの袖が上がりきってようやく、私の知っている彼女の白い肌が、傷ついていない白い肌が見える。
赤い陽光が、廊下とそれをぼやかせ、私の目は混乱を極める。
「いくつあると思う?」
どこまでが一つで、どこまでが二つなのかわからない。
彼女の傷跡は丁寧に切ったそれとは違っていた。
言葉につまり、私はただ可愛らしい丸い顔を見上げただけ。
「だよね、えへへ、私もわかんない」
彼女の、冷たい風が吹くような笑い声は、廊下をはねまわり、耳を占領する。
彼女はながいまつ毛を私にしっかり向けて、喋った。
「篠田さんも嫌なことあるんでしょ?だから私のこと、いじめるんでしょ?」
彼女はかわいい顔を私に向けたまま、ずっとこっちを見つめてくる。
隙間風が初めて、私の背中を冷やした。
寒さが身に染みて、それが余計に、目の前の彼女の、おどろおどろしい傷の現実味に、明かりを放たせる。
1/12/2024, 8:40:22 AM