『大事にしたい』(創作:小説(風?))
仕事が終わり家に帰ると、朝の洗い物がそのままで、ため息をつきながら片付けた。夕飯の支度に取り掛かる。
一段落した頃、「ただいまぁ。今夜はカレー?」と勢いよく帰宅する息子に「おかえりぃ、カレーだよぉ」と大声で返すと「やった。カレー大好き」とキッチンに顔を出して「カレーは匂いでわかるからねぇ」と得意そうに笑っている。まだ野菜を煮込んでいる段階なのに、そんなに匂うのかと思い換気扇を回した。
すると息子は「夕飯作ってる匂いってさ、家に帰ってきた感じして、ホッとするんだよねえ」と、言いながら、カレー皿を運んで来てくれた。
こんな何でもない日常だけど、大事にしたい日常だと思えた。
「父さんは今日も遅いんだっけ?」息子の問いに我にかえる。わたしは「そうね」としか答えられなかった。
あの人にとって、ここはホッする家ではないのだろうか…、あの人にとって、わたしたちとの生活は、大事にしたい日常ではないのだろうか…、そんなことが頭を過り、涙目になりかけた刹那、スマホの通知音が鳴った。
あの人からのLINEだった。
「今日は帰れるよ。久しぶりに君のカレーが食べたいな」
嬉しさの余り涙目には涙が溢れてしまった。
そういえば、あの人もわたしのカレーが大好きだった。今夜はカレーにして良かったと心底思うと同時に、彼のことも、もっと信用して大事にしたいと、思えたのだった。
(小説は不慣れですが、書いてみました。)
9/20/2023, 10:56:16 AM