あぁ、駄目だ……。
負ける。俺は死ぬのか。
世界の平和を託された俺は、勇者として魔王を倒す旅に出た。
長い旅路の果てに、魔王と対峙した俺は、魔王の強烈な一撃に倒れてしまった。
視界が闇に染まる。
俺が死んでしまったら、世界はどうなるのだろう。
大切な人達。世界の平和を祈るみんな。家族や、地元に残してきた大事な人。
みんなの希望を背負ってここまで来たのに。
自分の命が尽きることより、失いたくない、みんなの顔が浮かぶ。
でも、もう何も見えない。
ごめん。みんなごめん。
その時、瞼の向こうに、うっすらと一筋の光が差し込んでくるのが見えた。
「トドメだ!」
魔王の唸るような低い声が轟く。
必死に目を凝らす。
魔王の胸の辺りにどす黒い光が集まっている。最後の一撃を放つ為に魔力を溜めているのだろう。
ここだ。
禍々しい光が、今は希望の光に見える。
そこを目掛けて、全ての祈り、力を込めて剣を投げつける。
剣は闇を切り裂くように真っ直ぐ進み、魔王を貫いた。
『一筋の光』
11/5/2023, 10:35:33 PM