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向かい合わせの席で勉強していた、ある友人の姿を思い出す。

高校時代のことだ。何の間違いか、うっかり進学校に受かってしまった私は、凡人なりに懸命な勉学を積んでいた。
しかし、努力してみようとも変えきれないものは沢山あった。毎日の課題は山のようだったし、先生は厳しくて好きになれなかったし、同級生もあまり趣味が合わなくて馴染めなかった。
順風満帆とは呼べない高校生活。
彼女と出会ったのは、その最中だった。

私も彼女も、今でこそ互いに認める親友だが、当時は少し違った関係だった。
凡夫だが、要らぬところで完璧主義で、出来ない自分を許せない私。天才だが、価値観があまりにも世間離れしていて、「その他大勢」に混ざりきれなかった彼女。私たちは教室の爪弾きものであり、追い立てられた教室の隅で、悲しいくらいに気が合う2人だった。

初めの方は、お互いの距離を読みながら交流していた。しかし、1年も経てば双方ぼろが出た。本性を表した私たちは、お互いの理解できない感性を擦り合わせきれなくなっていった。毎日のように口喧嘩になり、その度に私は言い負かされ、泣きながら帰路に着いた。
喧嘩になるのは、いつも自習室の中だった。私は文系で彼女は理系。勉強する分野が違ったから、教え合うなんてことは無かった。ただただ、互いの勉強している姿が、ペンを回す仕草が、間食をつまむ姿が、何もかもが目について仕方なかった。
それなのに、毎日、お互い同じテーブルについて自習をした。精神を削り合いながら、些細すぎることで睨み合いながら、それでもペンは止めなかった。

それは無理解ではなかった。私も、彼女も、互いに甘えていたのだ。唯一の友人なら、好感も嫌悪も等しく解ってくれると、信頼に似た依存を振りかざしていたから起きた毎日だった。
だからこそ、私たちは離れなかった。そんな日々は次第に私たちを熟成し、いつの間にかかけがえの無い親友となった。

今も、彼女のことを理解しきれない時がある。
向こうだってそうだろう。

その度に、あの自習室で、向かい合った彼女の姿を思い出すのだ。
「なんだ、私たち、昔から変わらないじゃないか」と。

8/25/2024, 1:04:54 PM