蜂蜜林檎檸檬蜜柑

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【秋晴れ】




何年か前に

いじめが起きた。     いじめられた。

病んだ。         不登校になった。

親の喧嘩がエスカレート。 親が離婚した。

親が病んだ。       母子共に自殺を考えた。

中学校に入学した。    疑心暗鬼だった。

人間不信。        頑張った。

私も、親も、二人で、

頑張った。  頑張った。  頑張った。

頑張った。  頑張った。  頑張った。


中学三年生。       父親の事は割り切った。

凄く楽しい毎日。     幸せが続く。


けれどある日の興味本位でそれは崩れた。
それは、好奇心と私の勘違いから始まった。


脳の片隅にある記憶から、父親の勤務先を思い出す。


父親の勤務先を検索。   父親の名前を検索。

電話番号があった。    法律を調べた。

違法じゃない。      電話はできる。

四日後に、決行した。   怖かった。


『はい、◾︎◾︎◾︎ 株式会社 ◾︎◾︎ です 。』

『 ◾︎◾︎◾︎ です、 覚えてますか? 』

『 ◾︎◾︎◾︎ …… か , 久 し ぶ り 。 』


私の嫌な予感が、的中。

やはり小学校五年生の時から、

父親の時間は止まっていた。

中学三年生の私に対する態度はそこにはなく、

少しの動揺の後、

幼子を猫撫で声であやす様な声が、聞こえた。




ゾッとした。 恐怖した。 トラウマが蘇る。

喉の奥が詰まった。 電話を切りたい。

話す度に背筋が固まる。 

けれど、電話をかけたのは私。



『また電話するね。』
『成人したら、会おう。』


約十二分の電話を切る前の私の言葉は、

その瞬間から嘘になった。



嘘にしなければ、私が壊れそうだった。



もう平気だと思っていたものに対峙して分かった。

私は何も克服してない。割り切っていない。

忘れようとしても、それが脳裏を過ぎり続ける。

頭を振っても、怖い思いは変わらない。


大誤算だった。

ただ、恐怖を忘れていただけ。

秋晴れの今日、それに気付いてしまった。

兄弟の居ない私。母にも友達にも言えない悩み。

それが今日、出来てしまった。

清々しい秋晴れが、黒い気持ちで覆われた。

この恐怖が掠れてくれる日を、ただひたすらに待つ。

10/18/2023, 10:16:58 AM