美しいもの。
一遍の曇りなき快晴の空。跳ね回る子羊のような雲、対価なき愛を歌う風。
微睡みを包み込む黎明、大地を照らす白昼、艶やかに着飾った夕暮れ、星々が子守唄を奏でる深夜。
光に手を伸ばす草花、根が土を抱く木々、共に息づく動物たち。
自然は、美しい。
同時に人の営みもまた、賞賛し尽くせない美しさを持つ。
石畳を踏む足音のメロディ、喧騒のアンサンブル、ページを捲る静かなアクセント。
礼拝堂のステンドグラスから降りる極彩色の光、途切れないネオンの光、人の瞳に宿る光。
煌びやかなショーウィンドウ、山肌に這う家々、夜の窓辺に盛れる灯り。
自然には決して作りえない、人工的な美。
美しいものは永遠ではない。
いつかその美しさは失われ、廃れ、埋もれて消えていく。
だが、その有限の美しさを享受し、あれは美しいのだと感じることこそが。
最も美しいのだと、私は感じた。
[美しい]
1/16/2024, 12:23:28 PM