NoName

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 廊下を歩いていると、何か音がした。誰もいないはずの教室。誰かいる? 扉を開けてみる。誰もいない? 中に入ってみて、階段教室の上から眺める。一段一段降りて、教壇までたどり着く。誰もいないよね。振り向いて、ズラっと並ぶ机を見渡す。奥に向かって規則的に続く机の列が、いつまでも続いているように見える。

 これまで、どのくらいの人たちがここを出入りしたのだろう。色々な人たちの気配が教室の中に沈んでいる。ガタン、ガタン。ん? 椅子の音? 他の場所から響いているのだろうか。
 教室は、誰もいなくても、ずっと人の気配を宿している気がする。


「誰もいない教室」

9/7/2025, 7:30:49 AM