名無しの夜

Open App

「俺たち、仲間だろ!」

 顔をクシャクシャにして、叫んでいる。
 こういうの、なんて言うんだっけ?

 あぁ、血を吐くように叫ぶ、か。

 まさしく、口の端から血が滲んでいるものな。
 自慢の顔も痣だらけ。
 明日にはひどく腫れそうだ。


 ……明日があれば、の話だが。


 仲間、ね。

 確かにそう思っていたよ。
 脳天気にも、つい最近まで。


 なあ、教えてほしい。
 お前にとって、『仲間』とはどんな意味だったんだ?

 その定義をもって、今のお前はその言葉を発しているのか?


 ……もちろん、違うよな。


 だから笑って、背中で手を振った。

「仲間でいられたら、良かったのになあ?」


 定義が異なるとしても、仲間ではいられたかもしれない未来を、少しだけ想像して。

 二度と開くことはない、廃屋の扉を閉ざした。

12/10/2023, 10:51:23 AM