8木ラ1

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──拝啓、君へ。

お元気ですか。私は元気です。

蝉が泣きやまない午後、僕はようやくこの手紙を送ろうと決心しました。

あの日、祭りの最後。
君はあの花火を覚えていますか。僕はあの光景が今でも脳裏に焼きついたままです。
焼きついた光景は真っ赤な花ではなく、恥ずかしそうにはにかむ君の姿です。

今では花の弾ける音が聴こえるたびに、君のはにかむ浴衣姿を思い出します。

あの日、君の浴衣姿を初めて見ました。浴衣に慣れない君が、僕の手でバランスをとりゆっくり歩いていたのを覚えています。
あの時はああ言ったけど、本当は赤く帯びた顔を誤魔化すためです。

今、語っても仕方ありませんね。
あの時から素直になればよかった。
今更だけど、素直な僕の気持ちをここに、書き記します。

今まで素直になれなくてごめんなさい。照れ隠しで酷いことを言ってごめんなさい。
君といた時間が僕の人生の中で一番重要でした。
君の言葉が嬉しかった。君と過ごした日々が楽しかった。君の体温で埋め尽くされた日はいつもより脈が速かった。


貴方が好きです。
僕は、貴方をいつでも待っています。

───敬具。

7/11/2025, 10:05:53 AM