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 カフェに君を連れていきカウンターで注文をして席に着く。俺はコーヒーとモーニングサンドをトレーに乗せて、君にはカフェオレを渡し、ホットサンドが焼き上がるまで時間がかかると伝えた。

「待ってる間にあっつあつなカフェオレもぬるくなって飲みやすいかも」
 分厚いマグカップに注がれたコーヒーより薄い色の水面をゆらし続けている。猫舌の君が格闘しているのに俺には子猫がじゃれついてるように映っていた。果敢に挑戦するも「あつぅぃ…」と気抜けな感想。相当熱いらしい。

「はい、アイスコーヒーどうぞ」
「ううっ、今度こそ飲めると思ったのに」
 ストローを咥えて冷たいコーヒーで舌先をひやしている。ふぅ、とひやし終えて「ありがとう」と渡されたストローにリップが移りほんのりした色に数秒、くぎ付けだった。
 
 吊り下げられた照明は金属の蔦の葉が絡んだ繊細なデザインで席にはサボテンと多肉植物が置かれて
「見るからにぷにぷにしてそう」
 ホットサンドを待ちながらぷくぷくした葉を観察している。この店は緑が多く空気もきれいだった。

「先に食べてていいんだよ?」
「これは冷めないからさ、一緒に待つよ」
 俺が出来合いのサンドイッチを頼んだのは一緒に待てるように、アイスコーヒーだって頑なにホットを頼む君のためだった。
 
 お待ちかね、焼きたてのホットサンドが運ばれてきた。黄金色の焼き目と芳ばしいパンの香り。中心には…
「焼き印?」
丸まって眠る猫の焼き印が。
「ランダムでホットサンドの焼き印が違うんだってメニューにあったの。他の柄も気になっちゃうね」
 マグカップを持った君、カフェオレは飲みやすくなったらしい。
 すぐに口にしないのはホットサンドが熱いからか、寝ている猫を食べるのが勿体ないのか。

「また『この場所』に食べに来ようか。今度は俺も同じものを頼もうかな」

2/12/2023, 5:48:52 AM