宮平和実

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「一輪の花」

 病室のドアが開いた。
 私は、ドアが開く音で目を覚ました。
 「あら、寝ていたの?ごめん」
 母だった。
 「いいよ」
  昼食後に読書をしていたのだが、うとうとして、いつの間にか、眠ってしまっていた。
 母は、ベッドの近くに置かれた花瓶に一輪の花が挿してあることに気付いた。
 「彼が来たのね」
 「うん」
  私は、もうすぐ退院する。
  退院したら彼と、デートする予定がある。
 「楽しみだなぁ」
  私が独り言を呟く。すると、母は首かしげて聞いた。
 「何か、楽しみな事でもあるの?」
 「うん!退院祝いのデート」
 「それは、よかったわねぇ」
 「うん!」 
 母も自分の事のように嬉しそうだった。
 私は、退院する日に早くならないかなぁと思いながら、彼から貰った一輪の花を見つめるのだった。
 

2/24/2025, 3:28:27 PM