NoName

Open App

吹き抜ける風(オリジナル)

ねぇ、掃除道具どこにしまってあったっけ
誰もこちらを見ていない
誰も答えてくれない
皆場所を知らないのか
自分への質問と捉えていないのか

皆でご飯に行こう
すぐそこで同僚が話している
◯◯さん呼ぼう、◇◇ちゃんにも声かけて
その中に、決して自分の名前は出てこない
自分から声をかければ良いのかもしれないが、
嫌な顔をされるのが怖くて動けない

机の引き出しからペンが消え
ペン立てからマジックとハサミが消え
頼まれていた仕事の書類も見つからない
いったい誰が
上司にまた呆れられるのが怖い
皆が私を見て嗤うだろう事が怖い

後輩がお土産を配っている
当然、私の席には置かれない

誰とも目が合わない

私はいない人間なのかな
もしかしたらもう死んでいるのかも
たとえ私がいなくても
仕事も世界も
何事もなく回っていくんだな

誰か私を見て
誰か私に気づいて
誰か私に話しかけて
誰か私を必要だと言って
私はここにいるよ

空虚な胸を、
一陣の風が吹き抜ける

それは、

机上にポツンと置かれている
花瓶に挿されたお悔やみの
百合の花弁をそっと揺らすのだった

11/19/2025, 12:15:11 PM