二人ぼっち
「君となら、この世界に二人ぼっちも悪くはないね。」
「きっと何もなくてつまらないよ。」
「そうかな?もし本当にこの世界に二人だけ残されたら何をしようか。」
「なにもしない。ただぼーっと何かを考えるわけでもなく日が昇って鳥が鳴いて、花が咲いて、木の葉が枯れて、日が落ちていくのを見る。」
「それだけ?」
「それだけ。」
「…本当は君の言う“それだけ”が一番難しいことなんだよね。」
「わかってるじゃん。」
こんな会話をしたのはいつだったかな。
あなたはいつも本気なのか冗談なのかわからないキザなことを言うから、その度に返事に困るんだ。
あのときもそうだった。
「“この世界に二人ぼっち”か…」
あなたは春にこの世を去った。気づけばもう冬で、春も目前。
結局私だけが取り残されてしまった。
あなたがいない世界は何もなくてつまらない。
何をしていても何を考えていても、無意識にあなたがいた頃の記憶を漁ってしまう。
記憶の中の世界は優しく鮮やかで、現実の痛ましさが際立つ。
「あなたと二人ぼっちの方がましだったかな。」
日が昇って日が落ちて
花が咲いて葉が枯れて
鳥が鳴いて、あなたが笑っていた。
そんな夢をいつまでも見ていたかった。
もうあなたはいない。
3/21/2024, 1:08:39 PM