美佐野

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(冬晴れ)(二次創作)


 冬になると、マザーズ・ヒル中腹の泉は一面凍り付く。泉の中央にある小島は地下が採掘場となっており、宝石を求める者たちには最適なスポットなので、凍り付いて渡れるようになること自体は広く知られていた。一つ大きな変更点があるとしたら――氷の中に、パンツが閉じ込められていたのだ。
「いや、パンツって」
 第一発見者はグレイだ。よく晴れた冬の朝、上質な宝石を採りに、いの一番に凍った泉に駆け付けたらこれである。
「いや、パンツって」
 思わず2回呟いてしまった。それだけ異様なのだ。氷の中にパンツがあるなんて。
 不幸中の幸いは、それが女物では無かったことか。もしスケスケやフリフリやセクシーだった場合、グレイの命は無かった。おそらくメイビー。
 捨てる神あれば拾う神ありという。今日の場合、それは牧場主ユウトだった。
 おおよそ冬の山に登るとは思えないほどの軽装だが、背中には籠を背負っていた。採掘場で出た宝石を片端から入れるつもりだろうか。ユウトは、凍り付いた泉の前にいたグレイに気付くと、その視線を追って氷の中のパンツにも気付いた。
「あ、それ、僕のだ」
「僕のだ!?」
 きゅうりの総柄という作り手のセンスも買い手の脳内も疑いたくなるようなデザインのそれは、ユウトのものだった。曰く、春から秋にかけてよく泉に飛び込んでいたのだが、しょっちゅう溺れかけておりその度にパンツを失っていた。それが浮かび上がり凍り付いたのだろう、とユウトは結論付けた。
「さすがに冬はダイビングできないしなあ」
 そう呟くユウトは少し寂し気である。いかにも特別な事情がありますと言わんばかりだが、それ以上の追求はしないでおく。氷漬けのパンツは1枚ではない。何枚もパンツを失くしても飛び込む男がまともな感性をしているとは思えない。
「かっぱに会いたいなぁ」
 ――たとえ、気になり過ぎる独り言を耳にしたとしても。

1/5/2026, 10:11:18 PM