『パラレルワールド』
どうやら、僕はパラレルワールドに辿り着いてしまったらしい。
先程、トラックに跳ねられたのたが、異世界に転移するのかと思いきや、辿り着いたのはどうやらパラレルワールドだった。
……いや、魔法やドラゴンといったファンタジー要素を抜けば、現代に置ける転移もまた、異世界転移と言えるのだろうか……?
煩雑に道を行き交う人々、点滅する青の信号、雑踏を駆け抜ける車の騒音。慣れしたんだ都会の雑音達。
唯一違うのは……、人々の頭の上だ。
人々の頭の上にナニカの数字が現れている。
ゼロになったら死んだりするのか。
いや、そんなことは無さそうだ。
老人の方が若者より少ないといったことも無さそうだと、辺りを見回して頷く。
駄目だ。全然分からん。
ええい、やけくそだ。聞いてしまえ!
「すいません、あなたの数字すっごいですね」
なんか頭の上の数字が大きかった人にそう話しかけてみた。
「ん? ああ、よく言われるよ」
「なにか、コツとかあるんですか?」
「んー、やっぱり地道な努力と、どんなときも警戒を怠らないことかな」
だめだ、さっぱり分からん。
「へー、ありがとうございます」
破れ被れなヤケクソの感謝の言葉に、目の前の優しそうな青年はくすりと笑ってそして振り向きざま手を振って言った。
「うん、君も早く――たくさん『人が殺せる』ように頑張ってね。童貞くん」
硬直した僕を残して、くすくすという笑い声だけが心に残った。
……あぁ、まじでここ、パラレルワールドなんだなぁ。
9/25/2025, 3:29:54 PM